【第116話:ダンジョン その4】
オレ達は豪奢な飾りつけがされた門の前まで移動すると、視線をかわして頷きあう。
「じゃぁ、オレとパズから行くからね」
オレはそう言うとあらかじめ聖なる力を発動する。
≪我は『
≪
光の文様が収束するとオレの体を光が包み込む。
(力が湧き上がってくる。この力があればそうそう遅れをとる事はないはず!今度こそ!)
心の中でもう一度気合いを入れると腰のスティックを抜き放つ。
「さぁ!パズも準備は良い……か!?」
そう言ってパズを見ると、パズも同じような聖なる光に包まれていた。
「おぉ。さすがパズど……パズ様凄いでござる!」
「素の状態でも≪
ちょっとショックを受けながらもパズを心強く思い、オレは門を開け放つ。
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・!
そして門が開いた先に広がる光景に絶句するのだった。
~
豪奢な飾りつけがされた門の先は、学校の体育館がすっぽり入るほどの空間が広がっていた。
左右には何か異様な形の像が立ち並び、その中央最奥には玉座のようなものが配置され、その玉座の左右には二人の少女が佇んでいた。
「あらあら。思ったよりずっと早く辿り着きましたわ」
「本当ですね。そんなに死に急がなくても良さそうなのにね」
クツクツと笑いながら『クスクス』と『トストス』はこちらを楽しそうに眺めていた。
そしてその玉座には……、
「愉快だな。こんな所までよく追いかけてきたな。俺様のファンか?ストーカーか?」
と不気味にニヤリと笑いながら話しかけてくる男の姿があった。
「俺っちの恩人の顔で、声で、表情で!そんな不気味な笑いをなげかけるな!!」
そう言って激昂したグレスが権能を使って攻撃を仕掛ける。
「ブレイズーーーショットーーーー!!」
グレスの前に薄く大きい魔法の膜が出現し、そこを突き抜けた
ボシュッーーーー!!
巨大な炎を纏い、矢よりも早く玉座に向かって飛んでいく。
しかし、玉座に座ったままのその男は、
「借りものの体なのだぞ?傷ついたらどうしてくれるのだ?」
そう言って体から一気に闇を溢れさせると、前方に展開する。
ジュウゥ!!
まるで水の膜に突っ込んでいったようにグレスの放った炎の一撃は威力を失う。
「フハハハッ。この男の体を取り戻しにきたのではないのか?まぁそんな攻撃が通じるとでも思っているのが微笑ましいが」
余裕を見せて見下してくる男、『魔人ゼクス』はサルジ皇子の顔でそう呟くのだが、
「効かないのなんて百も承知っちよ」
グレスのその声が聞こえた瞬間に四方を氷で囲まれる。
「ばぅ!」
『クスクス』と『トストス』との分断に成功したパズは、オレに向かって今だよ!と合図を送ってくる。
「ゼークースー!!」
オレは一瞬でゼクスの上空まで移動すると、逃げ場のないゼクスに向かって光の突きを繰り出した。
「小賢しいわ!」
ゼクスは闇を同じように突き出して相殺してくる。
ガシュ!!
しかし、こっちはあくまでも陽動だった。
「ばぅぅ!!」
パズは魔力炉を全開にしてゼクスを閉じ込めた氷に魔力を注ぎ込むと、今度は四方だけでなく360度全ての方向から氷で包み込んで中心部にいるゼクスまですべてを氷で包み込むのだった。
「「なっ!?ゼクス様!?」」
それまで余裕を見せていた二人の魔人は、苛立ちながらもパズに向かって攻撃を繰り出す。
「たかが魔物の分際で無礼者が!!」
クスクスが放った鞭のような形状の闇がパズに向かって振るわれ、
「身の程を知りなさい!」
トストスの放った無数の闇の礫が一斉に放たれる。
「そうはさせないでござる!!」
【権能:鬼殺しの手】
メイは仮初の巨大な手を出現させると二人の攻撃をその手で薙ぎ払う。
「「きゃっ!」」
油断をしていた二人の少女の魔人は予想外の速攻に対応できず、吹き飛ばされる。
≪わが身は力。その
『
そして今度は間髪入れずに放たれたリリルの拘束魔法にとらわれて身動きを封じられる。
「ユウトさん!今です!!」
リリルの合図を聞いてオレは呪いの解呪を開始する。
(ヨシ!!ここまで作戦通りだ!)
≪我は『
≪
光の文様がゼクスの持つ呪いの人形に吸い込まれていき、すべてを白き光で包み込んで跡形もなく消し去っていく。
「頼むっち!サルジ皇子を返してくれっち!!」
グレスがキントキのサポートを受けながら駆け寄っていく。
しかし……全てが作戦通りに事が進み、誰もが成功を確信した時だった。
「ばぅぅー!」
「え!?」
パズの叫びにオレは咄嗟に反応出来なかった。
バギギン!!
パズの警告を皆に伝えようとしたその時、轟音と共に砕け散った氷の中から『漆黒の闇』が溢れ出した。
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