【第98話:オーレンス王国】
オレ達は兵士の人たちにみんなで謝り許してもらうと、ようやくオーレンス王国に足を踏み入れる。
パズが
ちなみに今度はしっかり言い聞かせて、普通の速度で進んでもらっている。
と言っても普通の馬車の2倍ぐらいの速度は出ているのだが。
(しかし、だいぶん慣れたけど小さなチワワがこのデカい
オレは先ほどの兵士たちがキントキではなくパズが
そんな事を考えていると2回目の分かれ道にさしかかる。
「ところでパズ。匂いはどっちの方向に向かっているんだ?」
とオレがパズに尋ねると、パズは止まってこちらを振り向くと、しばし無言の後、
「……ば、ばぅ?」
と言って視線を斜め上に逸らして無言でUターンをする。
「……パズく~ん……」
「……ば、ばぁぅ?……」
(完全に匂い辿るの忘れてたな……)
こうしてオレ達は1個目の分かれ道まで戻り、もう一つの道を進んでいくのだった。
オレ達の旅は順調だ……。
~
分かれ道まで戻り、そこから更に1時間ほど進んでいると日が落ちてきて空に朱がさしはじめる。
するとグレスが、
「普通ならここら辺で野宿するのを勧めるんだけど、このスピードなら日が完全に落ちる頃には街が見えてくると思うっち」
と言って懐かしそうに目を細める。
その表情に気付いたリリルが、
「グレスさんの実家はこの近くなんですか?」
と問いかけると、グレスは
「違うっちよ。でも、このオーレンス王国は本当に小さな国だからこの国のほとんどの場所は行ったことがあるっちよ。そもそも街が3つしかないっち」
と苦笑しながら説明してくれる。
「そのもう少しで着く街はなんていう街でござるか?」
今度はメイが窓の外を見ながら聞いてくる。
「今向かっている街は『ポルクス』って言う人口3000人ぐらいの小さな街だっち。それで……ん?ユウトっち?どうしたっち?」
オレが少し気分悪そうな顔をしていたからだろう。グレスが街の説明をやめて顔を覗き込んでくる。
「顔近いよ!オレはそんな趣味ないぞ!」
と、オレがからかうとグレスは
「な!?俺っちこそそんな趣味ないっちよ!心配して損したっち!」
と案外真面目に否定してくる。
するとリリルが、
「たぶんユウトさんは『第三の目』を使って街が被害受けていないかとか調べてたんだと思いますよ。距離が離れた所を調べるのは少し苦しいそうなので」
とオレに変わって説明する。
「そうだったっちか……。ユウトっち悪いな」
「まぁ気にするな。あとこの国の3つの街は少なくとも今はまったくもって平和だよ」
「え?『ポルクス』だけじゃなくて、『王都オーレンス』やその向こうの『セグメス』まで調べてたのか!?」
「まぁね。なんせ相手がゼクスだからちょっと心配になってね。オレ自身が先に調べて安心したかっただけだよ」
それを聞いたグレスは少し姿勢を正すと、
「ありがとう。俺もそれを聞けてちょっとホッとする事が出来たよ」
と最後にあらたまって頭をさげてくる。
「よせよ。気持ち悪い。『っち』つけろよっち」
「な!?気持ち悪いはないっちよ!」
と軽い言い合いをし始める。
すると、メイが
「グレス殿。ユウト殿は照れ屋さんなのでそこは聞き流してあげると良いでござる」
と、うんうんと頷きながら解説しはじめたので、オレは慌てて
「ちょ!?メイさん!?本人いる前で解説したらダメなんじゃないかな!?」
などと今度はメイも参入してワイワイと言い合いが始まるのだった。
そしてリリルとキントキは、そんなオレ達の言い合いを楽しそうにほほ笑みながら眺めていた。
ただ、オレは心の中では
(しかし……どうしてなんだろう……。何故かあのゼクスと残りの女の魔人二人だけは『第三の目』に映らないんだよな……何とかサルジ皇子が無事なうちに見つけないと……)
と一抹の不安を覚えるのだった。
~
その後、パズに牽かれて30分ほど
そして辺りが完全に闇に包まれたちょうどその時、オレ達は『ポルクス』の街に到着するのだった。
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