【第80話:ゲルド皇国の戦い その7】
あまりの出来事に辺りはしばらく静まりかえっていた。
オレとスケルトンソルジャーとはまだ500mは離れており、そもそも魔法の攻撃が届く事自体普通はあり得ない。
それが何かの大魔法が放たれたかと思うと、五千もいたスケルトンソルジャーが一匹残らず破壊され消滅したのだ。
(まぁ、そもそも魔法ですら無いんだけどな。しかし、この戦いが終わった後、オレ達普通の生活できないかもしれないな…)
と、オレは内心苦笑する。
少なくともパタ王国やゲルド皇国では難しいだろう。
(だけど……それでも救えるなら……)
そして状況がすぐに呑み込めないで茫然としているのは、敵だけでなく味方も同じだった。
「……な、何が…いったい何が起こったんだ……」
「これは……私は神の奇跡でも見ているのか……」
そしてシトロンさんの周りでも。
「シ、シトロン様……『勇者グルーロの英雄譚』……本当に生で見れましたね……」
「あ……あぁ、私もさすがにここまでとは思わなかったが……」
オレは今は1kmぐらいまでなら『第三の目』をそれなりの時間維持できるようになっている。
シトロンさんもオレがここまでだとは思っていなかったようで、ちょっと頬が引き攣っているのがわかった。
きっと全部終わったら色々話さないといけないだろう。
(でも……これでいいんだ。力を隠して手を抜いて後悔したくない。オレの力で守れるものがあるのなら全部守ってやる!)
ただ、うちのパーティーメンバーはこの結果を予想していたようで、
「あ!?メイちゃん!まだ飛び出したらダメ!」
「えー!僕の分がなくなっちゃうでござる!(がうがぅ!)」
「ちょっと待って!私じゃさすがに残りの魔物『全部』は倒せないから!」
「その言い方だと、ほとんど倒しそうでござる!?」
「ばぅ!!」
(…あ…パズが抜け駆けした……)
「「「あぁぁーー!!(がぅー!!)」」」
(みんな……何やってるんだ……)
と、平常運転だった……。
~
「おい!いったい何が起こった!!すぐに調べてこい!」
その魔人と思われる者は配下の魔物に慌てて指示をだす。
しかし、その指示を出し終わらないうちに今度はまた別の魔力の渦が発生していることに気付く。
「な!?今度はなにごとだ!?」
魔人が慌てて異変を感じた方を振り向くと、そこには空高くにキラキラと光る『何か』が輝いていた。
その姿は本当に幻想的で、まるでダイヤモンドダストのようだった。
そしてその白い
世界が凍り付いたかのような神秘的な光景。
しかし、空を埋め尽くさんばかりの白い煌めきは魔人には恐怖以外の何ものでもなかった。
何せその白い煌めき一つ一つ全てには信じられない程の魔力と加護の力が込められているのがわかったのだから。
「ふぐぬぅわ!?」
あまりの驚きに変な呻き声をあげる魔人。
そして遠くから聞こえてくる変な鳴き声。
「ばうぅぅぅ!!」
その鳴き声をきっかけに静かに動き出す無数の白き煌めき。
サァーーーーー…!
静かな動き出しとは対照的に凄まじい速度で魔物の軍勢に降り注ぐと、すべての魔物に数えるのも馬鹿らしくなるほどの無数の穴を
そして
~
魔人以外のすべての魔物が倒され、静まりかえる戦場。
いや。ただ魔物が討伐されただけの場所と言った方が良いかもしれない。
「ばぅ!」
最後に満足げな一吠えが聞こえると、それをきっかけにまた賑やかになる。
「パズくん!!」
「パズ殿!!酷いでござる!!」
「がぅがぅ!!」
やはりうちのパーティーメンバーは、こんな時でも平常運転だった……。
ただ、そのいつも通りのみんなの姿と行動が、オレの心を少し落ち着かせてくれるのだった。
~
しかし、まだ終わりじゃないと約1名、怒り心頭の奴がいた。
「き、貴様らーーー!!」
言わずと知れた血まみれでボロボロの魔人である。
その魔人はオレ達の姿を確認するとすぐそばまで突っ込んでくる。
「魂ごと引き裂いてくれる!」
しかし、このタイミングで出てきた魔人に同情するオレ。
何せ久しぶりの出番だとキントキが待ち構えていたのだ。
「熊風情がー!!」
と叫んだ魔人だったが、それが最期の言葉になる。
「がぅぅん!」
キントキは瞬時に体全身に魔力を纏うと、かき消えるように魔人の前に移動し、魔力撃改を放ったのだった。
ズパーーーン!!
ただでさえ人間を遥かに上回る身体能力にセリミナ様により、知恵を授かった事で魔力による身体強化やオレ直伝の魔力撃改を覚えたのだ。
下級の魔人程度では今やキントキの敵ではなかった。
「がふふふふっ♪」
しかし、敵を倒して満足そうなキントキは、この後メイとの死闘が待っているとは思ってもみなかった。
(がんばれ……キントキ……)
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