【第58話:仲間】
「えっと…、そろそろ良いでしょうか…」
オレは足を痺れさせてフラフラしているミドーさんに話しかける。
「あぁ。すまないね。もう大丈夫だよ」
とミドーさんがこたえるが、他のみんなの視線が若干痛い…。
「それでイタズラは神託のついでって言われましたが、どういった内容だったのでしょうか?そもそも神託自体はどのような形で受けたのですか?」
オレはセリミナ様からどんな指示を受けたのかと考えながら聞いてみる。
「新緑の神『グリサス』様から神託が下ったのですが…」
「え!?セリミナ様ではなく?」
と、オレは話を遮ってしまう。
ミドーさんはオレの問いかけに少し驚いた顔を見せるが、
「はい。グリサス様からです。内容はもうすぐ娘が闇の眷属に追われて里に逃げ帰ってくるから戦力を集めて迎え撃ちなさいと。そしてその後、上の娘を里から一人で送りだしなさいと言われたのです。そうすれば悪き知らせと共に、それを打ち破る力を持った良き者達を連れてくるだろうと」
と、話してくれた。
(おぉ!すごいな!神様はやっぱり予言みたいな事ができるのか~)
と内心感心した後、
「あ…ちなみにメアリはもう追放取り消しでいいんですよね?」
と一応確認しておく。
「あぁ。もちろんだとも。気付いてなさそうだがもう『追放の印』も消しているよ」
と当たり前のように答えてくれた。
ちなみに『追放の印』というのは、エルフでありながらもこの「はじまりの森」で迷ってしまうようになる呪いのようなものらしい。
「メアリさん良かったですね!」
とリリルが嬉しそうに話しかけるのだが、
「ありがと。ただ…嬉しいんだけど、それ以上になんかすごく悔しいし、腹が立つんだけどね…」
と父親を睨みながら答えるのだった。
~
その後、この集落が闇の眷属に狙われており、ここから少し離れた山奥に敵が集まりつつある事、闇の眷属以外にも『世界の理を壊す者』という闇の眷属を崇拝する人間組織も暗躍していることを伝える。
「そうか…。結構思っていたよりまずそうな状況だな。念のために籠城できるようにこの数日で食料などは多めに集めてはあるが…」
と、ミドーさんは うぅ~ん と考えだしてしまう。
「族長!それよりもその人間側の組織が気になります。ひとまず今回の件が落ち着くまでは外部の人間の通行を制限した方が良いのではないですか?」
と、一人の長老が話しかける。
ちなみにこの長老も全然長老っぽくなくて日本でモデルをやれそうな容姿だった。
(エルフ恐るべし…)
と、どうでも良い事を思っていたのは内緒だ…。
「そうだな。既に里に入っている者も改めて問題ないか確認しておくようにしてくれ。それでユウト君達はこれからどうするのだ?」
とミドーさんは指示をだし、オレに今後の予定を聞いてくる。
「出来れば今日はここで一日宿をお借りして、明日の朝ここを発ち、夜に奴らを奇襲できればと考えています。ただ、その前に…」
と言って、オレはリリルとメアリを順に見つめる。
すると、リリルが覚悟を決めて話し出す。
「すみません。私の名前はリリルと言います。こちらに私の生みの親である『ミイル』という方がずっと眠り続けていると聞いたのですが…」
と話し始め、長老たちを驚かす。
「なんと!?君はミイルさんの娘なのか!」
「ミイルさんに娘がいたという噂は本当だったのか…」
そしてミドーさんは、
「これは本当に驚いたな…。君が姉さんの娘だとは…」
と驚きの言葉を述べる。
「え!?ミドーさんのお姉さんなのですか!」
と今度はリリルが驚く番だった。
そしてオレも思わず反応し、
「という事はリリルにとってはミドーさんは叔父さんで、メアリは従妹って事になるのか」
とあらためて3人を順に見つめるのだった。
~
一通りぎこちない挨拶と話が終わり、少し落ち着いてきたのでようやく本題を切り出す。
「それでリリルのお母さんは眠り続けているんですよね?それをオレに治療できないか試させて貰えませんか?あと、メアリの妹のエリンも同じような症状なのであれば一緒に」
と治療をさせて欲しいと願い出る。
「おぉ!それはもちろん歓迎するよ!話も終わった事だしこの後出来ればすぐに見てやってもらえないか?」
と快諾してもらい、オレ達は話を一旦終わらせてミイルさんとエリンのいる所に向かうのだった。
~
「お父様、ここですね」
と言って待ちきれずに走り出すメアリ。
「中に看病してくれている者がいるから驚かさないようにな」
と言って自らも少し早足になるミドーさん。
(二人とも待ちきれないみたいだな。リリルだけでなく、二人の期待にも応えないといけない)
オレは心の中で気合いを入れなおしてから、後をついて行くのだった。
~
部屋の入口まで来たオレ達は、看病をしてくれていたエルフの女の子と入れ違いに部屋に入る。
リリルのお母さんであるミイルさんも、メアリの妹であるエリンも二人とも同じ症状だったので同じ病室で看病されていた。
「この人があたしのお母さん…?」
と呟くリリル。
オレは後ろから震えるリリルの肩にそっと手をかけて、
「大丈夫? オレが絶対治してみせるから。そしたらお母さんとちゃんと話をすればいいよ」
と話しかける。
「ユウトさん…。ありがと。私…どういう反応したら良いのかわからなくて…」
と涙を流すリリルをそっと抱きしめるのだった。
「うわぁぁぁん!リリル殿~~!」
「ばぅぅぅぅん!ばぅばぅ~~!」
「がうぅぅぅぅ!がぅがぅ~~!」
と言って泣きながらオレ達に抱きついてくるメイ、パズ、キントキ…。
「それで…、なんで3人揃って号泣して抱きついてくるんだ……」
なんか色々台無しである…。
(まぁでも……これで良かったかな)
「ふふふ。みんな、ありがと!」
とそこには笑顔になったリリルがいたのだった。
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