【第18話:冒険者ギルド】

 辺境の街「テリトン」に入り、中心部に向かって進むキャラバン。

 皆ようやく街に入れてホッとしているようだった。

 ギムによる裏切りやアーマードベアの襲撃などがあった為、オレだけでなく他のメンバーの顔にも安堵の笑みが浮かんでいる。

 ただ、みんな何度か来たことがあるようで落ち着いているのに対して、オレだけ少しお上りさん状態だった。

 街並みが気になってついキョロキョロと…。

 街は概ね中世ヨーロッパといった感じで情緒があって非常に良い感じだ。

 だが、魔法やマジックアイテムの存在の為か、一部近代的な部分が見受けられる。

 この通りは南北に続く一番大きな通りなのだそうだが、飲食店をはじめ雑貨や洋服、武器や防具などの店も軒を連ねていた。

 オレはそんな風景を見ながら歩いているのが楽しくて仕方なくなり、


「な~んか憧れのヨーロッパ旅行に来たみたいだな~♪」


 と思わず呟いていた。

 旅は大好きだけど、パズと行くのが難しいので海外旅行は1回しか行ったことがなく、夢がかなったようで嬉しかった。

 ただ、パズは観光よりも門でもらった従魔用の赤いリボンが気に入ったようで、首に巻いてやるとなんだかご機嫌の様子だった。


「ばぅ♪」


 ~

 しばらく道なりに進むと、バッカムさんが今後の予定を話してくれる。


「それではまずは宿を確保しておきましょうか。馬車を預けれる所は限られていますからね」


 そう言ってそのままみんなで宿に向かおうとしたのだが、


「バッカムさん。バッカムさん。宿を探してる間にユウトさんをギルドに連れてってあげてもいいですか?」


 とバッカムさんに許可を取ると、リリルは素早くパズを抱きかかえ、オレの袖を掴んで冒険者ギルドに向かうのだった。

 なんか効果音でルンルン♪って聞こえてきそうなぐらいご機嫌のリリル。

 オレも嬉しかったのだが、女子耐性の低いオレの耳が真っ赤なのは触れないでいてほしい…。

 ~

 ようやく袖を解放されたオレはギルドに向かってリリルと二人で歩いていた。


「リリル。冒険者ギルドでの登録ってどういう事するの?」


 オレは冒険者ギルドの登録の仕方を聞いてなかったのを思い出して確認する。


「心配しなくても大丈夫ですよ。申請書書いて魔力紋を登録すれば後は説明受けて終わりです」


 魔力紋とは魔力による指紋のようなものらしい。※Byかくかくしかじか


「あ!忘れてました。あと登録料で銀貨1枚かかるけど大丈夫だよね」


 これは盗賊を引き渡した時のお金があるので大丈夫だ。

 協力して連れて行ったのだから報酬はみんなで分けようと提案したのだが、頑なに拒否されて受け取ってもらえなかった。

 なのでオレが金貨9枚全部受け取っている。


「お金は大丈夫。さっきバッカムさんが両替してくれたから銀貨もあるよ。ありがとう」


 これがわかっていたから両替してくれたのかとバッカムさんの心遣いに感謝し、リリルにもお礼を言う。

 そしてちょうど話が終わったあたりでリリルが立ち止まり、目的地に着いたことを教えてくれた。


「ここが冒険者ギルドだよ!」


 そこには3階建ての大きな建物が建っており、オレ達を歓迎してくれるようだった。

 ~

 中に入ったオレとリリルは、申込書をもらう為に受付に向かう。

 窓からは木製の塀で囲まれた訓練場が見え、数人の冒険者が訓練しているのがわかる。

 そして受付にたどり着くと、ギルドの受付嬢が話しかけてきた。


「こんにちは~。ギルドへは何の用かな~?」


 二十歳ぐらいの明るいお姉さんが話しかけてくる。

 少し褐色の肌に短い髪、大きな目の健康的なお姉さんだ。


「えっと~冒険者になりたいので申込書を頂けませんか?」


 すると受付のお姉さんは、


「おぉ~!やっぱりそうか~お姉さんそんな気がしたよぉ。そっちの子も一緒に登録かな?」


 と話しながらリリルを指さし申込書を2枚取り出し渡してきた。


「い・い・え! 私はこれでもブロンズランクです。ユウトさんのメンターは私のパーティーで受け持つ予定です」


 といって、受付のお姉さんにギルドカードを手渡す。

 リリルは少し不満そうだったが、


「おぉ~その年でブロンズランクでメンター資格まで持ってるとは思わなかったよ。ごめんね~ん」


 と悪びれる様子もないお姉さんに毒気を抜かれ、ギルドカードを返してもらったのだった。

 ~


「じゃぁ提出書類はこれでOKだね!後は冒険者ギルドの説明だけど?」


 聞いてく?とリリルの方を見る。


「大丈夫です。私の方で説明しますので」


 リリルが説明してくれるらしく、ここで受付のお姉さんとは一時別れて2Fに向かう。

 ギルドカードは後で帰りにでも取りに行けばいいそうだ。

 2Fにあがると冒険者が自由に使っていいテーブルがいくつも用意されていて、その内の空いているテーブルに座るとリリルが色々説明してくれた。

 ~

 この国の冒険者ギルドではメンター制度というものが施行されていて、冒険者になるとまずは見習いとしてどこかのパーティーの依頼に参加させてもらう。

 もし、パーティーが見つからない場合は基本的にギルドが斡旋してくれるが、それでも見つからない場合は約5日間のギルド主催の講習に参加することでも免除される。

 ただ、講習は毎日やっているわけではないので、タイミングが悪いと20日以上かかる上に有料のようだった。

 ちなみにメンター資格を持っている人がいるパーティーでのみメンターの受け持ちが認められている。

 あと、依頼を受ける時は基本的に受付嬢から斡旋される依頼の中から選んで受けることになる。

 これは冒険者の実力や人格にあわせて依頼を受けてもらい、全体の依頼成功率を上げるためだそうだ。

 依頼を受ける時はギルドから必ず「契約の石」をもらっておかなければならない。

 これが無いと依頼を受けた証明ができないので絶対に無くさないようにという事だった。

 討伐依頼の場合は、対象の魔物を倒した後にこの契約の石を魔物に当てる。

 すると討伐対象の魔物のみ魔力紋を記録するので、それをもって討伐の証明とするようだ。

 それ以外でも、ある種のお使いのような依頼なら、届けた相手の人に宅配便の印鑑のように触ってもらい、届けた証明にするなど、冒険者ギルドにはなくてはならないものだった。

 ちなみに倒した魔物の素材などは、だいたいどこのギルド支部でも素材買取の店が併設されていおり、そちらに持ち込めば適正な価格で買い取ってもらえるそうだ。

 キャラバンにいくつか魔物の素材があるので、今度一緒に売却の手続きをしてみる事になった。

 ~


「色々教えてくれてありがとう。でも、まだわからない事多いと思うしこれからもよろしくな」


 リリルからの一通りの説明を受け終わってお礼を言い、席を立とうした時だった。


 隣のテーブルにいた10歳ぐらいの小さな男の子が凄い勢いで駆け寄ってくる。

 そして同じく凄い勢いで頭をさげてこう言ったのだった。


「お願いでござる!僕も一緒にメンター制度の受け入れをして頂けぬでござるか!」


(な!? なんか凄いござるキャラが出てきた!?)

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