【第7話:驚きの再会とマジックアイテム】

「あいたたた…やっと放してくれた…。でも、、パズ… 一緒に転生できて良かった…。本当に良かった…」


 少しだけ赤くなった鼻で涙目で話しかける。

 異世界で一人ぼっちじゃない喜び。

 パズがそのままの姿、そのままの性格(鼻に噛みついた行動パターンから)で転生してくれた喜び。

 向こうで一緒に過ごした色々な思い出がよみがえり、何か熱いものがこみ上げてくる。


「ばう~ばうばう!」

「そんな事言ったって、またパズと一緒に過ごせるかとおも・う・・とーーーー!?」


 なんとなくだが「待たせたな~」と「相変わらず涙もろい」みたいな気持ちが伝わってきた。

 しばし思考停止…。


「いやいやいや!なんだこれ!?パズの言葉が何となくわかるぞ!?」


 最近「なんだこれ!?」や「思考停止」が多すぎないかと思いながら、だんだん耐性ができてるのか素早く復帰する。


「ばうわう」


 そして今度は「また付き合ってやる。しっかりしろ」みたいな気持ちが伝わってきていた。


「あ!もしかしてだけど、パズの方もオレの言葉理解できたりするのか!?」


 オレが理解できたのだからと確認してみる。


「ばう!」


 するとその予想は当たっていたようで、「当然!」というような気持ちが伝わってくる。

 そして犬好きなら絶対一度は夢見る「愛犬との会話」ができる事に興奮し、約30分もパズとくだらない話をするのだった。


 ~30分後~


「いや~パズはあの時そんな風に思っていたのか~」


 昔、パズがイタズラした時の話をしたりして盛り上がっていたのだが、この30分でだいたいの事もわかってきた。

 オレとパズの間にはどうやらラインのようなものが繋がっていて、実際には言葉ではなく言葉に乗った気持ちを認識できるようになったようだ。

 そしてこのラインのようなものはお互い感覚的に感じとれていて、例えば目を閉じていてもパズがどの方向のどれぐらいの距離にいるかが理解できた。


「パズと意思疎通できるようになったのは嬉しいけど、オレ達にはまだわからない事だらけだしこの能力ばかり調べてもいられないな」


 ようやく異世界に来ていることを思い出して真面目モードに切り替える一人と一匹。


「それでこれからどうする?とりあえず魔物がいるらしいし、注意しながら人のいる村か町を目指すしかないかな~」


 さっき見た羊皮紙の地図を取り出す。

 遠くに見える森と街道、湖の位置からだいたいの方角と現在地はすぐにわかった。

 さすがに旅好きを公言しているだけあって地図を見るのは得意だ。


「ちょうど地図の真ん中あたりにいるようだな。良し!いったん南の街道に出て、そのまま西の方にある町っぽい所に向かってみよう!」


 パズも何となく理解できているようで嬉しそうに返事してくれる。


「ばうわう!」


 了承と共に警戒はまかせろ!みたいな気持ちが伝わってくると、そのままオレについてこいとばかりに先頭を歩きだすパズだった。

 こうして一人と一匹は、まずは人の姿を求めて異世界の旅を始めるのだった。

 ~

 順調に40分ほど歩いて街道に出ることに成功し、リュックから地図を取り出し確認しようとした時にそれはおこった。


「あれ??地図がなんか変わってないか…?」


 最初に確認した時にしっかり頭にいれたつもりだったが、見間違えたか記憶し間違えたかと考える。


「ばぅ?」


 パズがどうした~?みたいな事を言ってくるので地図をみせてやる。


「ほれ。でも、おまえ地図みてわかるのか?」


 すると、しばらく地図をじーーーっと見つめていたが、ゆっくり視線を逸らして素知らぬ顔をするパズ。


(やっぱりわからなかったんだな…そっとしておいてやろう…)


 その後、あらためて地図をじっくり見直してみるとある可能性に気付く。


「これ、魔法の地図なんじゃないか?たぶん自分のいる位置が常に中心に来るようになってるんだよ!」


 旅好きのオレにはうってつけのマジックアイテムじゃないかとちょっとテンションがあがる。

 ただ、勘違いだといけないので確かめてみる事にした。


「予想が正しいかどうか、地図を持ったままこのまま西に移動してみよう」

 ~

 10分ほど街道を西に進んで検証してみると、予想通りに地図が書き換わっていくのを確認できた。

 スマホのナビのように縮尺を変えたり向いてる方角まではわからないが、常に自分のまわりを表示してくれる魔法の地図のようだ。


「これはこの世界を旅するのには心強いアイテムだな♪」

「ばうぅ♪」


 パズはあまり良くわかってなさそうだが、オレがご機嫌なのがわかったようでパズもご機嫌に返事をするのだった。

 ~

 そこから特に何事もおこらず、2時間ほど進んでから少し遅いお昼休憩を取る事にする。


「パズ~。結構歩いたしもう昼もだいぶん過ぎてそうだからお昼休憩でも取ろうか」

「ばうわう!」


 腹減った~!とパズ。

 早速リュックから干し肉の入っている小袋を取り出し、その中の2枚をお昼ご飯とする事にした。

 オレは干し肉は初めて食べるのでちょっと楽しみだ。いろんな食事は旅の醍醐味だしね!


「お!うまいな!」


 あまり美味しくなさそうに見えたのだが、この世界で、そしてこの肉体ではじめて摂る食事は特別美味しく感じる。

 パズは犬用干し肉なら何度も食べたことのある大好物だったので、嬉しくてその場をクルクル回って喜ぶのだった。

 ~

 干し肉2枚(うちパズは0.3枚ほど)だけの食事ではあったが、思ったよりお腹も満たされた。


「いや~予想外に干し肉旨かったな~パズもかなりがっついてたし旨かったか?」

「がう!」


 また食わせろみたいな気持ちが伝わってくる。かなり気に入ったようだ。


(街で同じようなの売ってるのかな?そもそも何の肉だったのかもわからないんだけど…)


 ちょっと何の肉か考えだすと少し不安になってくるので思考の外に追い出す。

 そして、口直しにボトルの水を飲んでパズにも飲ませようとしたその時、二つ目のマジックアイテムの存在に気付いた。


「あれ?・・・・。水が減ってない!?これ魔法の水筒みたいだ!」


 パズに飲ませるために片手でお椀の形を作って飲ませてやるがやっぱりまったく減った様子がない。


「すごいな…。これも旅で大活躍しそうだ」


 現在地を表示してくれる魔法の地図に、水が湧き出してくる魔法の水筒。


「もしかして他のナイフや木彫りの人形とかもマジックアイテムだったりして?」


 そう思ったオレは、リュックの中からまずはナイフを取り出して試してみるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る