【第5話:見極めし者】

(新たな生をプレゼントって??小説とかによく出てくる転生とかってことですか?)


 旅の移動の電車で読んだ小説のストーリーを思い出して聞いてみる。


≪まぁそんな感じかな?記憶も魂もそのまんまだから安心して~≫

(おぉぉ!ありがとうございます!本当に神様なんですね!)


 オレは思わぬ展開に思わず思っていたことを口走ってしまう。


≪神様って信じてなかったのね…。まぁ神様だから疑ってるのわかってたし、許してあげるけど…。許してあげるけど~!≫


 神様のオレを見る目が若干ジト目になっていて、転生してもらえるのか少し心配になる…。


(す、すみません!)


 何度か必死に謝ることでようやく女神様は機嫌を直してくれた。

 ~


(あれ?そういえば…)


 ふと凄い大事なことに気づくオレ。


(あの…。女神様の世界って邪竜とかいる恐ろしい世界なのでは…?)


 さっき「かくかくしかじか」で伝えられた内容を思い出し、少し動揺する。

 実際レムリアスは魔物が跋扈する剣と魔法の世界であり、ただの日本のサラリーマンなんて転生しても即死亡確定だろう。


≪あ~。優斗の元いた世界と比べると確かにかなりハードモードかもね~。邪竜はもういないと思うけど普通の竜とかはいるし≫


 たまに村や町ごと魔物に滅ぼされたりするしね~、、とかサラッと恐ろしいことを口にする女神様。


(えっと、、、転生辞退するって選択肢はあるんでしょうか……?)


 魔物に殺される未来しか見えないオレは、辞退できる可能性を確認してみる。


≪きっと大丈夫だよ。レムリアスは魔素があふれる世界なので人も最初から少し強いし~≫

≪それに魔物を倒すことでその魔物の魔力を一部吸収して人もかなり強くなれるから!≫


 なんかRPGみたいだなぁとか思うが、それでもやっぱり魔物と聞くと少し怖かった。


≪ん~まだ怖い?≫

(それは怖いですよ!だってついさっき魔物みたいなのに、槍で殺された所なんですよ…)


 そう。ついさっき闇が変化した無数の槍に、自分の胸を貫かれて殺されたところなのだ。

 怖くないわけがなかった。


≪まぁでも安心して。優斗の転生する先の肉体は、私が自ら作り上げたハイスペックボディなんだからね!≫


 どうやら私の意識が戻るまでの間に既に用意してあったようだ。


≪たぶんちょっと頑張れば、そのうちオーガぐらいなら素手で殴り倒せるんじゃないかな?≫


 オーガ殴り倒すなんてそれなんて魔物?とか少し思ったが、まぁ女神様お手製の肉体って事でありがたく感謝しておく。


(な、なんか、凄そうですね。。ちょっと大丈夫な気がしてきました…)

≪でしょ!あと、優斗にはちょっとした力もサービスするから!≫

≪じゃぁさっそく行くよ~。スキルスロット~すた~と~!≫


 ふざけているのか真面目なのかわからないが、無数の光の球が現れたかと思うと回転しながら渦を巻きだす。


≪はい優斗君。ストップって言ってね!≫


 幾度目かの思考停止に陥りそうになるが、なんとか踏みとどまった自分を褒めてあげたい。


(ス、ストップ…です…)


 すると渦が急停止し、一つの光の球がオレに向かって飛び出してくる。

 そのままその光の球はオレにぶつかると一瞬輝きを増し、細かい粒子になって消えていった。


(いったい何が…)


 困惑していると何かが頭の中に鐘の音のように響き渡り、透き通った力が浸透してくる。


≪「【権能】見極めし者」か、超レアなの引き当てたね~≫

(見極めし者…、これはいったい…?)

≪ん~。力の使い方は自分で色々試してみて。きっとこれからの優斗を助けてくれる良い物だよ~≫


 女神様が言うのだから、きっと何か役に立つ力なのだろう。


≪さらにサービスでレムリアスの基礎知識もプレゼント!ほれ「かくかくしかじか」~!≫


 ュイイーーン!

 やっぱり「かくかくしかじか」すげーーー!って思いながら、とりあえず感謝する。


(どんな世界かなんとなく理解できました。色々本当にありがとうございます)

≪あ。今の基礎知識だけど、千年前の知識だから鵜呑みにしないでね(ハート)≫

(え?千年前の知識ってほぼ通用しないんじゃ・・・)


 改めて考えれば女神様は千年間封印されていたので当たり前かと諦めるのだった。

 ~


≪それじゃぁ私も千年分の仕事が溜まっているし、優斗にはそろそろ転生してもらうね~≫

(わかりました。よろしくお願いします!)


 これからは一人で頑張って生きていかないとダメなんだと、あらたに決意をしていると…。


≪そうそう。パズちゃんも後から転生させたげるから!≫

(え!?パズも一緒に転生させてくれるんですか!?)

≪あったり前ですよ~。パズちゃんも命の恩人、、いや恩犬おんけんだよ!≫

(異世界で一人ぼっちじゃないんだ…)


 またパズと会えるんだと噛みしめるように出たその言葉は、心をそっと暖かくしてくれた。

 となりの小さな輝きが一瞬瞬いたように見えたのは勘違いではないだろう。


(本当に、何から何までありがとうございます!女神様のことは一生忘れません!)

≪こちらこそありがと!ちなみに私の名前は『セリミナ』だから覚えておいてね≫


 その名前を心の中で呟き、あらためてお礼の気持ちを伝える。

 するとセリミナ様はにっこり微笑むと、手のひらをこちらに向けて眩い光を紡ぎだす。

 そしてオレの異世界「レムリアス」への転生がはじまる。


≪あ。あと、形式上優斗には私の使徒として転生してもらう形になってるから、これからもよろしくね~!≫


(えぇ!?聞いてないで…す…よ…ょ…ょ……)


 使徒とかいう爆弾発言を聞きながら、オレの意識は遠のいていったのだった。

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