【第4話:導きの光】

 気が付くとオレは真っ白な世界の中にいた。


(なんだろう?ここはどこだ??)


 まだ朦朧とする意識の中、ゆっくりと記憶がよみがえってくる。


(はっ!?そうだ!オレ殺されたんじゃ!?)


 思わずあげた叫び声は、しかし声にはならなかった。


(あれ?なんだこれ?なんかうまく体も動かせないぞ?)


 ちゃんと周りは見えてる気がするのだが体の感覚がおかしい。

 何かがおかしいのはわかるのだが、状況が理解できない。


≪めざめましたね。こんのゆうとのたましいよ≫


 厳かな声が響き渡る。


(あの声だ!え?魂っていったい?オレは…死んだのか…)


 闇の槍に貫かれた感覚がよみがえり、一瞬胸が苦しいような感覚に襲われる。


≪だいじょうぶですか?おちついてきいてくださいね≫

≪あなたはなくなりました。あなたのせかいのうらがわのそんざいにより…≫


(や、やっぱり死んだのか…。夢じゃなかったんだ…まだまだやりたい事も行きたい場所もいっぱいあったのに…)


 パズと行ったあちこちのマイナー旅スポットが走馬灯のように思い出されてくる。


(あっ!パズは?パズも死んだのか!)

≪はい。ざんねんながら。しかし、あなたのすぐそばにいますよ。ほら、そのよこにいるかがやきがぱずです≫


 その声にうながされて隣を見ると、確かに光り輝く何か暖かいような存在がそこにいた。


(パズなのか?守ってやれなくてすまなかったな…。それと、今までありがとうな)


 ちゃんと気持ちを伝えられただけでも良かったと思い直し、その声に向き直り感謝の言葉を述べる。


(あなたがどのような存在の方かはわかりませんが、ありがとうございました)


 きっと神様か何かなのだろう。

 その姿を見れなかったのは少し残念だな…と考えていると、急にある1点が輝きだす。


 ュィィーーーーーーン!


 すると文様のようなものが現れて輝きだし、人型のシルエットを映し出す。

 そして厳かな光が収束し、ようやく現れたその姿は白いワンピースを着た幼い少女のものだった。


≪は~ぃ!姿見てみたそうだったから出てきてあげたよ~≫


(え・・・?)


 ちょっと予想外過ぎてオレの思考が停止する。


(えっと、、、、どちらさまで?)


≪あたし?神様だよ~≫

≪やだなぁ~。わかってる癖に~。あ!顕現したから話し方がスムーズになったでしょ~?≫

≪本当はこっちが「素」なんだけど、顕現しないとうまくはなせなくて~≫

≪だからそれならそれっぽくキャラ作ってみちゃえ!みたいな?神様キャラっぽく話してみたんだけど、どうだった~?≫


 あっけにとられるオレ。

 ちょっとした衝撃の事実に5分ほど思考を停止したのだった…。

 思考停止しちゃうのも仕方ないよね…?オレ悪くないよね…?


 ~5分後~


≪やっと復帰した~!もう、私だって忙しいんだから時間とらせないでみょね!≫

(あ。噛んだ…)

≪ご、ごほーん≫

(あ。ごまかした…)

≪と・に・か・く!説明は聞く気あるの!?聞く気ないならこのまま異世界送っちゃうよ~!≫


 神様(?)がちょっとご立腹のようである。


(え?今なんて?異世界送るとかなんとか?それにあなたは本当に神様なんですか?)


 話が少しそれてしまっていたが、ようやく気になっていたことを質問してみる。


≪そうだよ。正真正銘の神様ですよ~。女神様ともいう!≫


 なぜか「えっへん!」と胸をはってそう答える自称神様。


≪ただ、私はあなたの元々いた世界ではなく別の世界『レムリアス』の神様なの~≫

(異世界の神様…。でも、何であんな所に祠が?声からしてあの祠に祭られていたんですよね?)


 偶然ではあるけど、パズと一緒に打ち込まれている楔を引き抜いた祠を思い出す。


≪その節はありがとうね!ユウトとそこのパズちゃんは私の命の恩人だよ~≫

(命の恩人?)

≪あ~。話すと説明長くなるから…『かくかくしかじか』なのです!≫


 反射的に「かくかくしかじか」じゃわからないですよ!って突っ込もうと思ったその瞬間、

 ュイイーーン!

 すべてを理解した。


(おぉ。そんな状況だったんですね!って、、「かくかくしかじか」凄すぎだから!!確かに理解できましたけどぉ!)


 大まかにはこんな感じだ。


 ~

 今から約1000年前、異世界「レムリアス」では邪竜があらわれ破滅の危機が訪れていた。

 いくつもの国が滅びゆく中、当時の女神様の使徒が中心になり、いにしえの勇者召喚の儀式を成功させる。

 使徒は勇者と共に邪竜を追い詰めることに成功するが、儀式により二つの世界のラインが活性化しているのを邪竜に気づかれてしまう。

 追い詰められた邪竜はそのラインを悪用し、異世界から転移しようとした。

 その事態に気づいた女神様は、自分の使徒が行った儀式が原因で他の世界に被害がおよぶのを阻止するため、先回りしてラインを封印する。

 転移を阻止された邪竜は勇者に討伐され、二つの世界の危機はなんとか回避された。

 しかし、女神様がラインを封印するには自らが祠のご神体を依り代に降臨する必要があった。

 そこを邪竜の最期の力で放たれた古代竜言語魔法「呪縛の楔」を打ち込まれてしまい、そのままオレたちの世界で眠りについてしまったのだった。

 ~


≪理解できた?だからパズちゃんと優斗は恩人ってわけ~≫

(千年もの間封印されていたのですね…。私のいた世界のためにありがとうございます)


 いきなり出てきたスケールの大きすぎる話に戸惑うが、オレのいた世界のためにしてくれた事に素直に感謝の気持ちを伝える。


≪そんなの気にしなくていいよ~。たかだか千年で出れたし。それよりも本当はあなた達を救ってあげたかったのにごめんね~≫

≪ほら~私異世界の神様でしょ?優斗の世界では力の一部しか使えなくて~≫

≪だから「導きの光」であなた達二人の魂を異世界に引っ張ってくるのがやっとだったの≫

≪まぁあいつら正属性の光に弱かったみたいで消し飛んじゃったけどね≫


「ふふふ」と笑いながら、幼い少女の姿で身振り手振りで説明してくれた。


(あいつらやっぱり倒してくれていたんですね!)


 最期は意識が朦朧としていたので記憶があやふやだったのだが、あの二つの存在を倒したという話を聞いて改めて感謝する。


(でも、その導きの光で魂をひっぱってっていうのはどういう事ですか?)


 異世界の天国にでも行けるのかな?とか思いつつ聞いてみる。


≪えっとね。元の世界には戻してあげれないんだけど、レムリアスで新たな生をプレゼントしようと思って~≫

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