第14話 小さな音楽家の話 4
「はい。これが今回の報酬金になります。」
あれから3日後。僕は久しぶりに冒険者組合で冒険者として仕事をしていた。
じいちゃん達のおかげで簡単に狩れるようになったから、効率も抜群。お金もがっぽり。
ん?なんで冒険者復帰して稼いでるかって?
そんなの簡単さ。あの計画のためだよ。こないだマリアとリース嬢に説明したやつ。
2人に提案したのは王立音楽団や音楽部にいる音楽は貴族のものというように思っていない、僕らと同じ考えを持ってる人もこちら側にしちゃおうというもの。
そのために店を会場として使う。
その日はステージに上がるのはマリアとリース嬢だけ。僕らは裏方と店の運営だけ。
まずとにかく人集める。だからその日は店の料理や飲み物はタダ。その代わり2人の演奏はちゃんと聞いてもらう。そしてその場で2人にどうしてこのような形で演奏会を開くことになったのか、これからどうしていくのかを話してもらうって感じかな。
そしてそこに、音楽は貴族のものっていう考えに賛同してない人たちも招待する。それが今から一週間後。
2人にはきついだろうけど10日でやれるって言われたからね。
ま、そのための資金集めって感じだよ。これから頑張らなくちゃ。
「あの〜〜…リョウさん?」
はっ!いけないいけない。受付嬢さんをほったらかしにしてた。
えっと、まだ何か?
「報酬以外に、まず今回の討伐モンスターにかけられていた懸賞金と、多数討伐者に贈られる褒賞金です。あ、それに素材売却の代金ですね。」
あれま。そんなにもらえるの?やったね。討伐するのは三日間の予定だったのになぁ。目標金額達成だよ。……ハハハ。
「……はい。どうも、ありがとうございます。 あ、そうだ。ギルドで非番の方、これよければきてください。」
そう言ってお金を収納の腕輪しまい、そのかわりに取り出した今回のことのチラシを渡す。なんだかんだギルドの人たちはよくうちの店を使ってくれてる。特に受付嬢さんたちが。美味しいんだって。やったぜ!
「え、えーー??こ、これほんとですか!行きます行きます!絶対!う、受付嬢全員で行っちゃいます!この日は有給とっちゃいますよ!」
え、受付嬢全員で来ちゃギルドが止まるでしょ。ギルドに負担をかけないようによ〜く話し合ってから来てくださいね。
そう言い、ギルドを後にし、店への帰路につく。
「楽しみにしてますね〜〜。」
…………後ろから聞こえる声に言いようのない不安を感じながら……。
ーーーーーーーーーーーー
ーー宿side
〜〜♪ 〜〜〜〜♫
コンコン。
マリアとリース嬢の2人が練習してる部屋がノックされる。
ドアが開けられ、
「2人ともお疲れ様〜。」
「お昼だよー!ごっはんー!」
ベラとローズが入ってくる。
「やった。ありがと〜。」
「ありがとうございます。」
そう。ここ数日は奏者の2人は『梟の止まり木』で練習しているのだ。週末の昨日今日は元宿の客室に泊まって朝から晩まで練習である。
「さ、食べよ食べよ。さっき帰って来たリョウに店の方は任せてあるからのんびり久しぶりにのんびり食べられるからうれしい!」
そして昼食である。
女三人寄れば姦しいというが、それは世界共通どころか異世界でも通用するようである。
そして皆年頃の女の子である。リース嬢やマリアの学校の男子の話であったりベラとローズの惚気話であったり、またまたリョウとの夜の話であったり………。とやかく話題なんていくらでも出てくるのである。
そのまま小一時間話してしまい、4人が時間に気がついたのはリョウの空腹が限界を感じ始めた時だった。
ーーリョウside
あ〜、お腹すいた……。
一体どれだけ話してたのさって感じだね。
僕もサッとお昼つくって食べちゃおっと。
今日の討伐のついでに狩って解体して血抜きを済ませたホーンラビットを一口サイズに切る。
それとネギみたいなこっちの野菜。めんどくさいからネギって呼んでるけど…。これも切っておく。
塩胡椒で軽く味を整えて、フライパンにオリーブオイルをちょっと多めに引いておく。
そこにホーンラビットの肉とネギを入れ、焼く。
焼き終えたら店にも使ってるタレをかけて、おかずの完成。これとご飯がよく合うんだよ。
ん?お客様、これはまかないですが…?
………………。
半分くらい取られちゃいました…。
ーーーーーーーー
そんな感じで一週間はすぐに過ぎ、いよいよ本番である。
勘違い貴族どもが手を出したりできないようにいろいろ手は打ったし。
あとは本番まつだけだね。
マリア達は来てくれた部活や王立音楽団のメンバーに挨拶してる。
あ、受付嬢さん達だ。
って、ええ……。
ギルドに勤めてる受付嬢さん達のほとんどがきた……。
まーいーや、しーらなーい。
さて、間も無く開演です。
僕もいろいろ教えたし、ベラも一緒に練習したらしい。
そして何より彼女達が頑張った成果。
みんなの前にこれから披露です。
みなさま、大変長らくお待たせいたしました。
息ぴったりな2人の奏者が、身分を超えて手を取り合い素晴らしい音楽を作り上げました。
どうか今夜は身分や出自に関係なく2人の演奏に耳を傾けていただき楽しんでください。
それでは開演です。
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