第15話 小さな音楽家の話 5
ー本番前日 マリアside
〜〜〜♪
………。
い、今のって…。
「ね、ねぇリース…」
「え、えぇ。きっと今のがそうよ。」
私たちは本番前日も梟の止まり木で練習していた。
リョウに言われた音が一つになる感覚。夜も更けきった頃に初めてわかった。
今までの演奏とは明らかに違う。
私の奏でた音もリースが奏でた音もそして私やリース自身も周りの空気もなにもかもが一つになって、とても大きく暖かい、幸せな響きになる。
その中にいると楽しくて自然に笑顔になったの。
演奏を終え、音がふっと消えて無くなってもずっとずっと胸にじんわり残っているわ。
曲の最後の方のほんの少しの時間だったけどその間のことはきっとずーっと忘れないわ。
リョウたちに伝えなきゃね!
もうお店も閉まる頃だ。もしかしたらもうしまってるかも…?迷惑かけちゃったなぁ。
どうしよう。なんて言おう…。ドアを前にしたら緊張が…。
ーリョウside
閉店時間も過ぎ、お酒で酔いつぶれた人たちもそのお仲間さんに任せて、店をしめた。
うちにくるのは初めてっぽい人だったからペース間違えたのかな?一応こっちの世界のお酒もあるし、地球の知ってるお酒はある程度揃えてある。カクテルとかも作ってるからなぁ。飲みやすいくせしてすっごくきついのとかあるからたまに出るんだよね〜。
まぁいっか。
酒場の喧騒がなくなったから奥からマリアたちの演奏が聞こえてきた。
お?いいじゃんいいじゃん。
差し入れもってこ。
〜〜〜〜♪
ちょうど演奏を終えたみたい。
ーガチャ
「入るよ〜。これ夜食がわりにでも…ど…うぞ…?」
あれ?なんでマリアがドアの前で固まってるの?
「もう!リョウのバカ!」
ベシィン‼︎
マリアさん。痛いです。
ーーーーーーー
そのあとマリアにビンタしたことを謝られ、またまた二人から謝られ…。
あれ?謝られてばかり?
まあそんなこんなで練習は終了。
よーし明日は忙しいぞ〜。
おやすみなさい!
ー本番。 身分で楽団入団できなかった人side
ーみなさま、大変長らくお待たせいたしました。
ー息ぴったりな2人の奏者が、身分を超えて手を取り合い素晴らしい音楽を作り上げました。
ーどうか今夜は身分や出自に関係なく2人の演奏に耳を傾けていただき楽しんでください。
ーそれでは開演です。
どうやら開演みたいね。
こないだ音楽部を退部させられた子と、その原因になった貴族御令嬢さんが演奏するみたいね。
何日か前にここの店でオーナーさんから宣伝を受けたの。
無料で食事ができて、演奏もある。
ちょっと怪しいって思ったけどよく来るお店だし、きてみようかしらって感じできたの。
どうせ貴族と平民でのデュエットだし上手くいくわけないとは思うけど、その時はお食事を美味しくいただければそれでいいわ。
奏者の準備が整ったみたい。さて、どんな音楽を聴かせてくれるのかしら?
〜〜♪
〜〜〜〜〜♪〜♪
周囲が一斉に息を呑むのがわかった。
いえ、違うわね。私も息を呑んだわ。
フルーノを演奏する貴族様と黒いフルーノみたいな楽器でその伴奏をする平民の娘。
私は今日初めて音楽というものを知ったのかもしれないわ。
黒いフルーノみたいなのはそれ一つで多彩な音が出せるものみたいね。
それでフルーノの伴奏を。
リズムが二人の間で完璧に共有されて…。
〜〜〜♪
…………。
演奏終了…ね。
何かしら。この感じは…。
諦めたはずなのに。
もう音楽はやれない、やってはいけないって…。
すごいわね、あの娘たちは…。
人の心をこんなにも簡単に揺さぶるなんて。
これからも応援してるわ。
ーーーーー
ーリョウside
演奏会は終了だね。
お疲れ様。
え?アンコール?
いいぞー!もっとやれ!(笑)
アンコールの最後に僕とベラまで一緒に演奏しちゃった…。えへへ。
もうすぐ店が閉まるという頃、二人が自分たちの楽団創設を考えてることをお客さんに話してた。
いいね。身分なんかに縛られず、音楽を楽しめる環境づくりか〜。応援するよ!
ーーーーーーーーーーーーー
その日に楽団を創設したあとはどこで活動するか、どうすれば入団できるのかっていう話をしなかったせいでしばらくそれを聞きに来るお客さんが多かったのはまた別の話。
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