第5話 姫騎士 2

部屋に案内するとアメーリア様は部屋の調度品をみて感心したように言った。

「とても良い品だな。この王都でもここまでのものを作るのはそうはいない。これは君が?」


なるほど少しバカっぽいイメージを受けてたけどそうでもないようだ。


良い目をお持ちですね。紅茶を淹れながら言うと今までいろんなものを見てきたから出来が良し悪しくらいは見分けられるんだそうだ。


「さて、ご依頼のお話しですが、確か剣の修理するというものでしたよね。」


「ああ、そうだ。この剣を修理できる人物は君ぐらいだとギルドから紹介を受けてな。受けてくれるか?」


「なるほど、御断りします。」


「なっ、即答はないだろう⁉︎」

アメーリア様は慌てているみたいだ。はぁ、僕は言ったじゃないか。


「私は先ほど、話を聞くだけならと、そう申し上げたと思うのですが。」


そう言うとしゅんとしてしまった。公爵令嬢が一人でこんなところにいるんだ。事情があることくらいはわかるがこちらも仕事がある。妖精は休みを必要としない上、ローズとベラの二人で宿はちゃんと切りもりできる。でも精神的な疲労はどうにもならない。そう長い間は抜けられないのだ。だから基本的に依頼は受けていない。


向こうもそれがわかっているのだろう。だが他に選択肢もないようだ。理由だけでも聞いてくれないかと言ってくる。


もうこれくらいでいいだろう。向こうがこちらに無理をさせたということにはなったはずだ。理由聞き、内容によってはうけてみよう。

そう思って、いいでしょう。お聞きしますよ。そう言って彼女の方を見る。あ、復活した。


「鍛冶屋を専門でやっていないここに依頼を持ってきたのは普通の鍛冶屋ではこの剣を治すことはできないと言われたからだとさっき言ったが、理由は簡単だ。これを見てくれ。」


そう言って腰から剣を外し、渡してきた。


受け取ってみてすぐ、なるほどと思った。

これの材料を扱える人間は僕以外にはあのじいちゃんの友人しか知らない。あの人ももう死んじゃったし、他にないというわけだ。それにこれ…。


「ここに持ち込まれたわけは理解しました。たかにこれを扱える人間はそうはいません。僕は扱えますが。」


僕は扱えますがのところで目に見えて表情が変わる。この人交渉下手なんだろうな。というかこんなんで貴族社会で生きていけるのだろうか。そんなことを思いながら続ける。


「この剣を修理することは可能です。もちろん費用も報酬もそれなりにいただきますが。しかし、この素材で作られた武器は余程の相手でなければ威力が強すぎます。私が聞きたいのはなぜそのようなものを修理する必要があるのでしょうかということです。それともう一つ。この剣、あなた(・・・)のものではないですね?」


あ、ダメだ。また驚いた顔してる。この人きっと貴族社会でやっていけないタイプの人だ。


なぜそこまでわかるかって?簡単だよ。まずどうして公爵令嬢だってわかったかというとかぶってるローブに公爵家の紋章が付いてた。しっかり見ないとただの模様にしか見えないくらいのサイズだったけど。

その上で歩き方から女性、その上何かしらの武術を持っていることまでわかった。貴族社会に公爵家に関係のある武術を修めた女性ってことで姫騎士さんかなってカマかけたらドンピシャってわけ。


そして剣のほう。こっちは簡単。だってこれあのじいちゃんの友人が作ったやつだもん。まあ僕の師匠なのかな?師匠の工房で修行してる時に50代くらいのおっさんが作ってくれって言ってきた時ものだし。


全部伝えるとアメーリア様は少し悩んでから何かを決心したような表情になり、こう切り出した。


「やはり明日、また話をしよう。明日の朝、迎えをおくる。それで構わないかな?」


何かに巻き込まれそうだけど師匠の剣に関係する話だ。行くしかないでしょう。それにアーガイル公爵家からの話だし、あの人関連だろうしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る