09:友人の死

「……っ!」

 光は、息を吸い込みすぎて、窒息しそうになった。

「そんな、まだ……まだ分からないじゃないか! 人工呼吸でも、なんでも……そうだ、ナーシャ、キミのさっきのやつなら治せるんじゃ!?」

 咳き込みそうになりながら、光は大声で訴える。

 それでも、ナーシャは首を振った。

「既に、霊魂スピリットが体の外に出ている。治癒ヒーリングの能力は、霊魂スピリットの交歓で身体エネルギーを活性化させるものに過ぎない。もはや、治癒ヒーリングでどうこうできる段階ではないなぁ?」

「……そんなっ」

 光は、愕然として四つんばいになった。

 地面を、軽くこぶしで殴る。

「どうして茜が……こんな目に!」

 いきなり後輩を置き去りにして走り出した光を、茜は追ってきたのだろう。そこまでは、推測できた。

 けれど、なぜ茜が死ななければいけないのか……光には、分からなった。

「MIBどもに、口封じされたようだなぁ?」    

「口封じ!?」

 光はくちびるを噛んだ。

「だったら、なんで殺す必要なんか……!」

 はぁ、とナーシャは疲れたような吐息を吐く。

「分からん、流れ弾に当たっただけかもしれん。いずれにしよ、やつらにそんな機微などありはしない。手元に銃があったから、撃っただけだろう」

「そんな、バカな……っ。乱暴すぎるじゃないか! こんなこと!」

 光は、目に涙を浮かべた。

 対して、ナーシャはすました顔で、

「やつらが、たかがガキ一人殺ったくらいで満足するか。何しろ、もっと乱暴なことをしようとしていたのだからなぁ」

 ナーシャは、けん銃の銃身をなでた。まったくの無表情で、光をチラっと長める。

「ここがどこか、考えてみろ。宮殿だぞ?」

「それが、どうかしたのかい?」

「バカ。お前は、この国の人間ではないのかぁ?」

 ナーシャは、黒いパンプスで光の腕を軽く蹴った。しょせん幼女の蹴りだから、特に痛くはないが。  

「やつらは、この国の君主を殺害しようとしていたのだ。もっとも、この私の活躍で阻止されたがなぁ」

 ナーシャは、あごをちょっと上に向け、けん銃をくるくると回した。

 いつもなら、好みの幼女に「えらいえらい」と頭でも撫でるところだったが、今はその余裕もない。

「どういうことなの……!? 君主陛下を、殺すって……!」

 友人の死から、何から、色々あったせいで、光の頭はいまいち回りきっていない。涙ばかりがにじみ、ナーシャの言葉を理解するのに苦労した。

「……まぁ、言ってもかまわんだろう。どうせ、お前には色々と見られているのだからなぁ」

 ナーシャは、コホンと咳払いした。

「MIBというのは、宇宙人の手先だ。そのくらいは、聞いたことがあるだろう?」

「は、はぁ……」    

 そもそも、宇宙人なんてものが実在するのか――という点から、光は半信半疑だったが。

 ナーシャは、説明を始める。

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