中編:スタンド・バイ・ユア・サイド1 ―猟犬達の日々―
「失礼します」
「入ってくれ」
ノックの後、挨拶。許可を貰い入室する。
こじんまりとしたオフィスに、そこの主である三十代後半の男性の姿が在った。
彼――治安連合機動二課の隊長は作業の手を止め、座ったまま迎え入れてくる。
「本日付けでこちらに配属となりました尾崎ユーナです。よろしくお願いします」
治安連合の制服に身を包んだ小柄なショートカットの少女――ユーナは形ばかりな敬礼を行う。
「受領した。よろしく頼む」
隊長はその態度を取り合う事無く続ける。
「さて、お前さんの扱いなんだが……」
「何か問題でもありましたでしょうか」
見せられた資料に目を通しても、ユーナは変わらぬ調子で答える。
半ば演技だが失礼な態度に指摘が無いのは、見抜かれているからだろうか。
特に反応を見せず、隊長はそのまま問いかけてくる。
「自分の活躍を判って言っているのか?」
「仕方ないじゃないですか。そもそも自分で望んだ訳じゃないんですから」
ため息混じりに答え、ユーナは頭を掻く。
「捕まって取引の結果、労働契約になったにも関わらず命令無視、独断先行を連発」
そんな彼女がこの場に到った経緯の概要を隊長が挙げていく。
「しかしそれを含めて成果を挙げていて扱いに困り、此方に島流しになったと」
「向こうの方針と合わなかったんですよ」
ユーナは鼻を鳴らし、言い捨てる。
諸々の行動は向こうでは気に食わない対応も多く、それへの反発の側面もあった。
利益を優先しての職務怠慢。やるなとは言わないが弁えるべきではなかろうか。
そんな意見を生じさせるのは正義感、ではない。
自分の様なのを捕まえてるんなら他もしっかりやれ、そんなものだ。
大体の所を知っているからか、隊長が微妙な表情で言葉を濁す。
「そうか……まあ、そうだな」
「こっちはしっかりしてると聞いたんで、その通りならアタシも真面目にしますよ」
「ウチはそんな事は無いつもりだ。そこは憶えておいてくれ」
ユーナの痛烈な皮肉に、隊長は心外だと言わんばかりの態度で応じる。
「本当ですか?」
「勿論だ。必要有用な場面は皆無ではないから絶対とは言えんが」
「そう言ってくれるなら、信じてみますかね」
「随分な物言いだな」
「アタシの経緯はご存知なのでしょう?」
と言って少女は肩を竦める。
取引などが全て駄目だとはユーナも思っていない。
処理の簡略化や友好の意思表示としての機能、そんな側面もあるのだ。
規定を優先して無駄な労力を払うより、多少の目溢しで全員が得する方が良い。
度が過ぎない前提を置いて優先されるべきは結果、それが現代社会である。
それと同時に、ユーナの言葉は警告でもあった。
「なら言い分も解る筈ですよね」
「個人的にもそういうのは好みじゃないとだけは言っておこう」
「嬉しいですよ、お世辞でもそういう事を言ってくれるのは」
「そう受け取られるから言うのは嫌いなんだ」
盛大にため息を吐き出した隊長が心労を追い払う様に頭を掻き毟る。
「なんで朝からこんなに疲れないといけないんだ?」
「信頼関係の構築はそれだけ重要な仕事って事なんでしょうね」
ユーナは他人事の様に応え、肩を竦める。
「そうだな確かに大切だ――っと、入ってくれ」
ため息を重ねていた隊長が視線を切ると、出入り口のドアが開く。
「失礼します」
一言を挟み、ユーナと同じく制服を着た男性が入室してくる。
外見は大柄な身体に黒い肌とブルネットの短髪と、中々精悍な要素を備えていた。
しかし雰囲気は比較的穏やかで威圧感はあまり無い。
一旦脇に下がったユーナを視界に掠め、彼は隊長に向け口を開く。
「用件は彼女ですか?」
「そうだ。本日付けでお前の所に配属となった尾崎ユーナだ」
「アイガイオンだ、よろしく」
「どーも」
ユーナは愛想笑いを浮かべながら男―ーアイガイオンの握手に応じた。
握手を解き、再び隊長へ向き直ったアイガイオンが問い求める。
「で、どうして俺を呼んだんです?」
「察しが悪いな」
「予想がついたから否定して貰いたくて尋ねているんです」
片手を頭に当てながら反論するアイガイオン。
その声には抗議の色が含まれていた。
隊長はそれを理解した上で、少々意地の悪い笑みでこう言った。
「残念だが正解だ。まあ組めとまでは言わん、当面の面倒を見ろ。だ」
「今の俺は比較的暇ですが、同性の方が良いんじゃないですか?」
「同僚になる相手なんだ。他から出張って貰うより面倒が減るだろう?」
「同僚って、前線に入れるんですか?」
アイガイオンは親指で肩越しに指しながら尋ねる。
先程からの言われ様に不服な表情のユーナを他所に、二人は会話を進める。
「俺もそう思ったが生憎と後方情報処理の人員は揃っていてな」
「それでもですよ、Rにも届いてないんでしょう?」
「これでも十八なんですけど」
「それは失礼」
ユーナは強い非難を込めた声を放つが、アイガイオンは軽い言葉でそれを流した。
「ともかく条件つきだが前衛も可能と判断した。そこは諦めろ」
二人に対して伝えながら、隊長は資料の入ったデータストレージを差し出す。
それを前にアイガイオンは大きくため息をつき、諦めのついた顔で受け取った。
「一応は認めたみたいだけど、何が不満なの。年齢? 性別? 個人的理由?」
一方のユーナはそんな彼に横から刺々しい態度で尋ねる。
「そこじゃない。個人的な好悪でもない」
「なら何処よ」
「装備への依存度。いつでもこの額面通りに出来るなら話は別だがな」
噛み付くユーナにアイガイオンが文句を叩きつける。
「そっちだって本番の時は装備揃えるでしょうに」
「素手だとチンピラにすら勝てなさそうなのが問題なんだ」
「む……」
事実を突かれたユーナの口が固まる。
確かに、今この場でアイガイオンを制圧するのはかなり厳しい。
現実的な方法ではハンドガンで頭を撃ち抜く、これしかない。
素手、或いは武器で殴り倒すなど論外だ。
ウェイトとリーチ、そして技術の差は如何ともし難いものである。
それとハンドガンでの射殺にしても成功率が高いとは言えない。
荒事に就いているなら相応のサイバーアップされていると考えるべきだろう。
反応速度強化、皮下装甲――つまり当たらず効かず、致命傷に至らないまである。
「嫌味抜きで業務上その程度は必要なるんだが、どうだ?」
「そうだけどこっちも流されてなんだし、今更ノーって言われても困るわよ」
ユーナは拗ねた様に口を尖らせる。
犯罪者はルールの遵守や手加減などしない。
能力が無ければ仕事を遂行出来ない所か、自らの命さえ危ぶまれる。
だからこそ彼が容易に歓迎してくれないのは理解していた。
しかし此処で断られても困るのも事実である。
引くに引けない様子に折れたか、ため息を挟んだアイガイオンが隊長に提案する。
「隊長、その辺りを不適格な理由として配置の再考して貰えませんか?」
「今回は上からの押し込みだ。お前の評価で再考出来る様に言質は取っているぞ」
「面倒を見る事だけは避けられませんか……全体への負担はどうなります?」
「支援の割り増しは取りつけた。上が受け取った分の大半をもぎ取ってきたぞ」
問いに対して隊長は口元に笑みを浮かべつつ淀み無く答える。
答え方からして、事前に準備していたのだろう。
つまりはどう足掻いてもこの場での結論は変わらなかった訳だ。
「相変わらずえぐい事しますね」
軽い苦笑を交えながら、アイガイオンが尋ねる。
「無理を押しつけてきたのは上だ。仕事が回る様にするのが管理職の仕事だからな」
「ちなみに、どんな脅し方したんでです?」
「とんでもない。負担だけ増やされると機能不全に陥いると、事実を伝えただけだ」
言葉を交わす二人が悪い笑みを浮かべていた。
「自分を人質にするとか、傍目から見ると斬新ですよ」
「アホはそれでも構わんとか言い出すから、使い所は選ばないと酷い事になるがな」
隊長は笑みを薄め、肩を竦める。
「アンタ達何してんの」
そんな二人に向け、ユーナは呆れを隠す事無く言葉をぶつける。
「仕事に必要な環境整備、って所でいいですよね?」
「まあそうだな」
アイガイオンに振られ、隊長が頷く。
「身内への恐喝が?」
「得意先、いや取引先との商売だ」
「その割にはマフィア同士のやりとりに見えたわよ」
「何を言う、下手に手が出せない分口で補っているだけだぞ」
自らの顔の前で指を振り、アイガイオンは続ける。
「大人しい笑顔なだけじゃ損しかしないからな。自由競争主義ってのは」
それはさも自分達が悪くないとでもいう口振りであった。
先程からのやりとりも含めて胡乱げな視線を向けながら、ユーナはため息をつく。
他都市の治安連合との関係だが、情報や資源の交換を行う程度の取引相手である。
個人の繋がりは別として組織レベルでは互いに身内の認識は無い。
基本的にバッティングが発生せず、従属関係にもならないためだ。
無論、同陣営ではないので派閥の概念も無かった。
「身内なのによくやるわね」
「身内じゃないぞ。ライバルでもない。だから面倒なんだ」
そんな言葉をため息と共に吐き出し、アイガイオンは話題を纏めた。
「という訳だ。尾崎、お前は今日から数日こいつについて回れ。命令は以上だ」
隊長がやるべき事は終わったとばかりに椅子を軋ませ、作業を再開する。
「解りました。当分のシフトの調整はお願いしますよ」
観念したアイガイオンはユーナに退室を促し、自身も動いた。
「じゃ、改めてよろしく」
廊下に出て第一声と共に、アイガイオンが握手のため手を差し出してくる。
「あれだけ言われてにこやかにすると思う?」
ユーナは握手に応じずに睨みつける。
「仕方なかろう。俺はまだ君の事を知らない。加えて君の能力は些か極端だからな」
「信用に値しないって言いたいワケ?」
「無意味に怪我をさせるのも気が引けたという配慮と受け取ってくれ」
アイガイオンは涼しい顔で応じてくる。
大人の余裕と言わんばかりの物腰にユーナは息を吐き、尋ねる。
「あっそう。それでこれからどうするの?」
「とりあえずはデータ取りのためにトレーニングだ」
「態々無駄な事をするの? データはそこにあるでしょ」
ユーナは彼の手にあるストレージを指差す。
「無駄じゃないさ。数字だけで全て判る訳でもないしな」
そう言ってアイガイオンはストレージを胸のポケットに仕舞い込む。
「……はいはい、解りましたよ」
それを見たユーナは口元を緩ませ、歩き出した。
@@@
爽やかな青空、緩く流れる風と、静かに揺れる樹木の音。
たとえ人工的に作られた偽りのものだとしても、悪くないものである。
そこは治安連合が保有する訓練施設だった。
正しく表現するならば設備の充実した運動公園と説明すべきだろう。
今も日頃の運動不足を解消するために軽い運動に興じる職員達の姿があった。
そんな場所の片隅、細めの木の傍にアイガイオンが腰掛けていた。
「……っ、……っ! …………っ、…………!」
隣には右手にハンドガンを握ったユーナが仰向けで寝転がっている。
身体を大地に預けてゆったりとリラックス――などではない。
体力を使い果たして身動き一つ、喘ぎ声すらも出せず呼吸に全力を注いでいた。
「ふむ、体力と運動能力は事務方の女性より少しマシな程度か」
少々居心地が悪そうにしながら、アイガイオンが冷静に評価を下していく。
「射撃の腕はぎりぎり及第点だが、弾は9ミリの上に反動軽減に全振りかぁ……」
何があったかだが、別におかしい事はしていない。
先程話していたユーナの身体能力、技術の確認を行っただけである。
内容は射撃訓練込みのアスレチックコースを一周。
整地や不整地を走り、飛び跳ね、障害物をよじ登る。
そんなコースを駆け抜けつつ、道中に出てくるターゲットを撃っていくものだ。
アスレチックコース自体はアイガイオン達が訓練に用いる本格的なものである。
肉体面の不足を指摘されていたユーナがやれば、こうなるのは当然だろう。
勿論、絶対不可能な特別メニューなどの意地悪はしていない。
事前に選択されたコースはアイガイオンが併走して息が切れていない程度だった。
ちなみに、今回のは彼らの通常の訓練に比べて負荷の軽いレベルである。
「というかやっぱり生身か。それで良く前線に出るとか言い出したもんだ」
「……うっさい。アタシは……生粋のアクトレスなの。肉体労働は、範囲外よ……」
会話が出来る程度に回復したユーナはそのままの姿勢で反論を口にする。
「それでもGに耐えたりするのには体力が要るだろうが」
アイガイオンは手にしていたスポーツ飲料のボトルを彼女の慎ましい胸の上に置く。
「ありがと。まあ、対応策はあるし……身体の使い方が違う、わよ」
「そんなもんかい?」
「そんなもん、よっと」
呼吸が整ってきたユーナはボトルを持ち、幹にもたれかかる。
「それで満足する情報は手に入った?」
「まあな。データが間違ってないと確認出来たし、真面目な性格なのも判った」
「やるからには効率を求める主義なの。こういうのってマイナス評価?」
「大いにプラスさ。個人的には特にだ」
と答えたアイガイオンは口元に柔らかい笑みを浮かべてみせる。
「治安連合の仕事って、精神論要るの?」
対するユーナはボトルを傾けながら、辟易した表情で尋ねる。
「この仕事はビジネス感覚でやるもんじゃないと思っているからな」
「そういう意味じゃ、向こうの上の連中はまさにビジネス感覚だったわ」
「知ってる。企業としての姿なら間違いじゃないんだが」
ため息をつく少女にアイガイオンが苦笑する。
オオサカで上層部と衝突した理由について納得しているのだろう。
「で、だ……なんでそんな格好してるんだ?」
「動き易い服装になれって言ったのそっちじゃないの」
微妙な目をする青年に、ユーナは羞恥心の欠片も無い様子ではっきりと答える。
原因はユーナの現在の服装――艶消しの黒いボディスーツ姿にあった。
細く華奢な全身が覆われたそれはかに動き易いのだろう。
しかしなんというか、身体のラインが丸判りなのは色々とよろしくなかった。
当然ながらアイガイオンが着用を命じた訳ではない。
激しい運動するからと着替えを指示を受け、自らこの姿になったのだ。
物自体はアイガイオン達が出動時に使っている様な代物である。
防弾防刃、薬品耐性もあって性能は悪くない。
運動に支障の出ないラフな服装も出来たが、ちょっとした仕返しも兼ねていた。
なおそれは有効に働いているらしく、アイガイオンは軽い渋面で反論してくる。
「いや、だからってなぁ……」
「街中を歩く訳でもないからいいでしょ。着飾る時はちゃんとやるからいいの」
「それでいいのか?」
「どーせこんな身体に欲情するのってそっちの趣味ぐらいでしょ」
自分の胸にボトルを当て、ユーナは捨て鉢に言い捨てる。
そんな彼女の身体について問えば、大抵の人間が魅力はあると答えるだろう。
小柄で細身だが、まさにスレンダーの表現が似合うスタイルだ。
尻の形も良く、特にくびれのあるウエスト周りのラインのポイントが高い。
ただ胸や太股まで全体的な細さに比例する様に控えめだった。
全体的に見ればバランスが取れている印象だが、ユーナには不満の種だった
男が大きい方を好む様に、女にとっても大きいは正義なのだ。特に自分のものは。
仮に実現したとして、デメリットが発生するとしても構いはしない。
むしろ豊かさを実感させてくれる要素となるのだから。
それはそれとして、自身の胸に向けられたアイガイオンの視線に気づく。
「……何よ」
「なんというか、すまん。この件はこれで終わりにしよう」
彼は態とらしく目を瞑り、切り上げてくる。
その態度に暴れだしたい衝動が湧き起こった。
しかし穏便に済ませようとする意思に免じて、ユーナは話を本線に戻していく。
「じゃあ、アタシの評価を聞かせてよ」
「正直もう一度説得したくなってきてるぐらいだな」
「そう言われてもね……」
真面目な指摘に怒気を緩ませ、ユーナは所在なさげに頭を掻く。
「ならなんで生身なんだ? 弄った方が操縦でも有利だろ。まさかの天然主義か?」
「誰が好きでローティーンに間違われるナリしたがるっての。中度アレルギーよ」
「マジか? フレーム乗りだから小さい身体なんだと思ってたぞ」
アイガイオンは声を跳ね上げた。
ユーナの口にしたアレルギーは、正式にはサイバーアレルギーというものである。
ある意味現代病の一つであり、サイバーウェアが使えない障害の事を指す。
症状は単純で、軽度であれば利用可能なものが限定される程度で済む。
しかし重度の場合は基本である脳の端末化処理すら不可能となる。
原因は様々だが数は多くなく、確認されている総数で人口比の五パーセント程度。
技術の進歩で軽減は出来ているが、撲滅には至っていない。
ユーナの場合は自身が述べた通り中度――正確には重度寄りであった。
可能なのは脳端末のみ、使える様になったのも一般的な年齢より数年遅れていた。
当然それ以外の身体改造は不可能であり、首から下は完全に生身であった。
その事実にアイガイオンは微妙な顔をして説得してくる。
「なあ、本当に考え直さないか? 大怪我した時のリスクも半端じゃ無いんだぞ」
「それも承知してるわよ」
「ならなんでやりたがるかぐらいは教えてくれ」
「単純よ。後ろで見てるより性に合っているから」
その答えは少女がフレームに乗る理由でもあった。
身体を弄れない彼女にとって、フレームは自分の半身だった。
自らの力、それを磨くための場を欲したが故。だからこその選択。
「そんなもんか。なら捕まったのはなんでだ?」
「そこは何をして、じゃないの?」
「少ない時間だがアホな真似をするタイプじゃないぐらいは判ったしな」
問い答え、アイガイオンは頷く。
「それはどーも。まあ、原因は単なる仕事中の巻き込まれよ」
「騙して悪いがか?」
「三割正解かな。やったのは治安連合の人間だったし」
嫌味のつもりは無い。最早終わった事としか認識していなかった。
だがアイガイオンはばつの悪かったのか額に置いた手で片目を隠し、言葉を濁す。
「あー……それは、すまん」
「そっちが謝る事じゃないわよ。やったのは東京の人間で、もう処分は受けてるし」
「なら此処に居る理由はどうなってるんだ?」
「治安連合の部隊と一戦交えた時の賠償。結果として分隊の装備半壊させたから」
過去の悪戯を告白する気分で小さく舌を出しながらユーナは答えた。
「そんな本格的にやったのか?」
「巻き込まれた子供助けるために悠長にやってらんなかったのよ」
「それでもよくやったもんだ。その子供はどこかのお偉いさんのだったのか?」
「IDすら持ってなさそうだったわ。助けたのだって単なる気まぐれよ」
行動したのは見殺しにすると後味が悪いと知っていたからだ。
判断基準は善悪ではなく自分の感情。
他者からすれば危険極まりない思考だと思われるかもしれないが、そこはそれだ。
「気まぐれか……」
アイガイオンは彼女が発した言葉を繰り返す。
その表情は疑問ではなく、納得の色が強く出ていた。
その彼に、一先ずの回復を果たして立ち上がったユーナは尋ねかける。
「そろそろ動けるけど、この後はどうするの?」
「夕方まではこのままトレーニングだ。あとこれからしばらくは続けるぞ」
「えー、と言いたいけど、判ったわ」
不満げな声を漏らしながらも、ユーナは従う姿勢を見せる。
反発を予想していた所を裏切られたらしい。
「お、その心情はどうした?」
「貴方を認めたからって事にしといて。改めてよろしくね、先輩」
驚くアイガイオンにユーナは笑みを返し、先程のスタート地点へ歩き出した。
あとがき
ある意味の本編の開始かもしれません。
この世界で書きたかった物語の一つなもので。
元ネタの一つはアップルシード、攻殻機動隊のセンセが書いていた作品です。
投降順に読んで下さっている方へ。
主役の片方が生身という属性被りを起こしている件について。
厳密には異なる二人ですが、明確な違いを存在させているつもりです。
なので許してください。
ササキの場合は生身『なのに』、ユーナの方は生身『だからこそ』なつもりです。
あとユーナの場合は一応身体改造が可能です。費用が思い切り高額ですが。
なので欠損レベルの大怪我を負った時、ついでに強化を行うぐらいでしょう。
一部作品の時系列ですが、以下の通りにしています。
本作品(スタンド・バイ・ユア・サイド)
↓
A・シンプルワークス
↓
次の主役中編
↓
レディ・ステップ
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