03 確信する男
飽きた。
いや、というよりは邪魔だ。四六時中流れ続ける映像が反吐がでるほどに邪魔で仕方ない。無音にしたところで、大げさなショッピング番組が目に焼きつくことに変わりない。
そう、最初は消すことが出来たのだ。深夜のサッカー中継をだらだらと酒を飲みつつ視聴して、そのまま寝てしまい消し忘れていた事はあった。そんな日の朝は勿論のこと寝不足で、視界がチカチカしていた。もっとも、そんなことはほとんどなかったしテレビの音声がないと安心できないほどには依存していた。
そんな日々にも不満があり、それは金だ。ひと月毎に落とされていく金額は、貯金のない自分にとって痛いものだ。通常の金額より安いものの、もっと安くならないものか。
そこで分厚いパンフレットを眺めるも、プランが複雑で全く理解出来なかった。そんな時のためにサポートセンターがあるようだ。
早速電話した。
「――とにかくさぁ、安くならないかな」
「ちょうどお客様にぴったりのプランがございます」
明るく若い女性の職員が勧めてきたのでそれにした。月々の支払いが半分以下になるそうだ。電話して良かった。なんて賢い消費者なのだろう。
目が覚めた。
騒音と光で。
延々と続く胡散臭い、でもちょっと便利そうな商品の紹介が終わらない。消せないのだ。
先日プランを変更してからというもの、テレビを消すことができなくなった。いつでも目の前に画面が浮かんでいるのだ。音量も多少の上げ下げは出来るものの、消せない。どういうことなのか。これでは眠れないどころではない。
早速電話をした。
「――そういうわけなんでプランの変更を」
「恐れ入りますがお客様のプランは二年契約となっていまして――」
そこから長々と説明されたが複雑で全く理解出来なかった。
「わかったから。もういいから契約を取り消してくれ。うんざりだ」
「そうなりますと違約金として――」
馬鹿げた金額だった。そんなもの払えるはずがない。馬鹿にしているのだろうか。
そんな電話をしている最中にも目の前では、偉そうな芸人が政治について語っていた。よくわからなかったが。
「キミじゃ話にならない。上司を呼べ!」
「……わかりました」
そうして代わった上司らしい男があまりにも怖かったので、すぐに電話を切った。
テレビではストレス発散方法が紹介されている。
それからしばらくは我慢できたが、駄目だった。頭がおかしくなりそうだ。今やっと通販番組が終わった。これからニュースが始まる。
新しく続く地獄の一日だ。
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