第9話 ヤバい数字と、お役に立ちたいと、ブーラブラ(何が?)

「あ、あの、ハロルドさん?」

「あ?」

「普通、レベル13くらいの人の体力ってどのくらいなんでしょう?」

「ステータスってやつか?」


あ、この世界にもステータスってあるんだ。


「そう、それです」

「さあなぁ……、一般人は成人の時教会で確認するくらいで、頻繁にチェックしたりしないからなぁ。成人14で登録しに来る奴とかみてると……200くらいか?」

「一般人?」

「自分の実力を正確に知ることが重要な冒険者なんかは、ギルドで確認するやつも多いからな」

「へー、ギルドでチェックして貰えるんですね。それって冒険者全員ですか?」

「犯罪の有無の確認なんかもあるから、新規登録時にはチェックされるな。後はレベルが上がった気分の時とか、ステータスを知りたいやつがチェックする感じだ。教会じゃ結構金を取られるが、冒険者がギルドでチェックするのはタダだしな」

「へー」


タダってところが無茶苦茶怪しい。冒険者の個人情報の収集だろうな。


「ハロルドさんってどのくらいなんですか?」

「おいおい、人のステータスを尋ねるのはマナー違反だぜ?」

「あ、そうなんですか。すみません」

「いや、まあいいけどよ。まあまあ強いくらいだ」


「すごく強かったですよ?」


とリーナ。


「はは、まあ嬢ちゃんに比べればな。しかし嬢ちゃんも、いきなりサマになってて凄かったじゃねーか」

「天才、なのです~♪」


リーナの場所で足をブラブラさせながら、尻尾をパタパタ振ってる。嬉しそうだな。


「はは、違いねぇ。どんどん強くなってたから、レベルも一杯上がってんじゃねーか?」


リーナのレベルねぇ……考えてみたら4に上がったときすでに200越えだったような。


 --------

 ヴォルリーナ (13) lv.14 (銀狼族)

 HP:3,943/3,943 3992

 MP:3,449/3,449 1152

 

 所有者:カール=リフトハウス

 

 SP:40 + 16(used)

 体術   ■■■■■ ■■■■□

 短剣術  ■■■■■ ■■■■□

 魔力検知 ■□□□□ □□□□□

 気配検知 ■■□□□ □□□□□

 

 カール=リフトハウスの加護

 --------


「げほげほげほっ」

「なんだ、むせたのか?」

「だ、大丈夫です」


いや、オカシーだろ。一体どうなってんだ。


「ステータスは、生まれ持った値と成長率で決まるそうですよ」


とお茶を入れ替えながらノエリアが言った。


「へー。そうなんだ」

「詳しいことは分かりませんが、基本になるのが『生まれ持った値xレベル』だと言われています。それにレベルアップ時に成長率が反映される値があるのだとか」

「ノエリアの嬢ちゃんは、なかなか詳しいんだな」

「あ、いえ、その……高く売れるからと学ばされたことが……あ、パンが膨らみそうですね」


急ぎ足でキッチンの方に歩いていくノエリアの後ろ姿を見ながら、ハロルドさんが顔を近づけてきて小声でささやいた。


「あの嬢ちゃんは、なんだかワケありっぽいじゃないか。お前、苦労するぜ?」


このオッサンは、基本的に良いヤツなんだが、こういうニヤニヤ顔は超ムカつくわけで……


「ハロルドさん、まだ食事には時間がかかりそうですから、風呂にでも入ってさっぱりしてきたらいかがですか? さっきお湯入れておきましたよ」

「ん? そうか? じゃあ、お言葉に甘えるかな」

「どうぞどうぞ」


と、タオルを渡すと、それを持って、鼻歌歌いながら浴室へ消えていった。


  ◇ ---------------- ◇


ふたりのステータスって、ばれたら一騒動ありそうだよなー。

この手の定番としちゃ、脱出後の奴隷契約時とか、ギルド加入時とか……ぐぬぬ。


しかし、考えてみたら生きてここを脱出できなきゃ数値の心配もクソもないわけだし。下手に自重してピンチに陥ったりしたら元も子もないし。

よし!自重するのやめ(いいのかそれで)


「なあ、ノエリア」

「はい、なんでしょう。ご主人様」


パンをオーブンに入れたところで、手を拭きながらノエリアが近づいてくる。


「ノエリアはどんな風に成長したい?」

「ご主人様のお役に立てるようになりたいです」


即答でした。

嬉しいけど、こう具体的にどうしたいとかの希望ってないのかな?


「具体的……そうですね。普段のお役に立てるように、生活魔法や回復魔法が使えるようになればと思います」


回復魔法、回復魔法っと。お、スキルリストの上の方にそれっぽいのがあるぞ。


「回復って、聖魔法?」

「はい。各属性魔法にもいくつかあるようですが、聖魔法が最も強力です」


なるほど。じゃ、使えるようにしましょうかね。ほいっと。


 --------

 SP:42+10(used)

 生活魔法 ■■■□□ □□□□□

 重力魔法 ■■□□□ □□□□□

 聖魔法  ■□□□□ □□□□□ New

 --------


うぉ。新しいスキルを取得させるとSPを10ポイントも使うのか。可能なら取得だけは自然にさせた方がいいな。


ついでにレベルも上げておこう。この先何が起こるかわからないしな。


 --------

 SP:18+34(used)

 生活魔法 ■■■■■ ■■■■■ lv.3->max

 重力魔法 ■■■■■ ■■■■■ lv.2->max

 聖魔法  ■■■■■ ■■■■■ lv.1->max

 --------


しかし、聖属性魔法とか、こんなに簡単に使えるようにしちゃっていいのかな? 一応女神の使徒(俺)の加護持ちなんだし、おかしくはないか。

攻撃が必要になったら……うーん、脱出するまでは短剣しかないし、その後のことはその後で考えよう。


なんだか、リーナが食い入るように見てる。しかたない、一応聞いてやるか。


「リーナはどうしたい?」

「ご主人様のお役に立ちたいのです」


しっぽブンブン振りながら、嬉しそうに答える。こいつは狼じゃなくて犬だよな。かわいいけどさ。


「ご主人様の露払いに、あたるを幸い、ばったばったと切り倒して敵を殲滅するのです!」

「……あのね」


短剣だしシーフとか忍者とか?

リーナはもともと高い斥候の能力を持ってるんだから、それを補う方向かな。ノエリアが怪我したときとか、回復も少しほしいか。


 --------

 ヴォルリーナ (13) lv.14 (銀狼族)

 HP:3,943/3,943 3992

 MP:3,449/3,449 1152

 

 所有者:カール=リフトハウス

 

 SP:40 + 16(used)

 体術   ■■■■■ ■■■■□

 短剣術  ■■■■■ ■■■■□

 魔力検知 ■□□□□ □□□□□

 気配検知 ■■□□□ □□□□□

 --------


お、検知系が増えてる。ずっと探索しながら来てたからか。

じゃ、ずずーっと。


 --------

 SP:7 + 49(used)

 体術   ■■■■■ ■■■■■ lv.9 -> max

 短剣術  ■■■■■ ■■■■■ lv.9 -> max

 魔力検知 ■■■■■ ■■■■■ lv.1 -> max

 気配検知 ■■■■■ ■■■■■ lv.2 -> max

 聖魔法  ■■■■■ □□□□□ New

 --------


「ノエリア」

「はい、ご主人様」

「生活魔法と回復魔法全般を使えるようになったはずだから、後で練習しておいてくれる」

「はい。わかりました」


そのとき、風呂への扉ががちゃりと開き、ハロルドさんが服を出てきた。


「ふぃー、気持ちよかったぜー」


それをみてノエリアは赤くなり後ろを向き、リーナはそれに負けじと尻尾を振っている。


「ハ、ハロルドさん、前、前!」


よーするにスッポンポンでブーラブラなわけだ。あんたは昭和のだらしないお父さんかっ!


「お? こりゃー失礼。替えの服がなくてよ」


と言いながらタオルを腰に捲いていく。


「ノエリア」

「ひ、ひゃい!」


顔を真っ赤にして後ろを向いたまま、ノエリアが答えた。


「さっきの話だけど、とりあえず、みんなの服を綺麗にしておいてくれると嬉しい」

「じゃ、じゃあ試してみます」


赤面したまま、目を閉じて一所懸命集中していたノエリアが、目を開けると同時に詠唱した。


「ネ、ネトワヤージュ!」

「うわっ」


ごうっと何かに包まれたような感覚がしばらく続き、それが過ぎ去ったと思ったら、部屋中が作りたてみたいになっていた。服もまるで新品だ。


聞くところによると、生活魔法というのは、レベル1で全ての呪文を覚え、単純に魔力をつぎ込めばつぎ込むほど効果が大きくなる特殊な体系で、レベルは魔法操作の熟練度に過ぎないそうだ。

一体何ポイントをつぎ込んだのか知らないが、魔力に余裕のあるノエリアなら練習するほどに凄腕のメイドになるに違いない。


「おおう。闘いといい、生活魔法といい、嬢ちゃんたちは一体どうなってやがんだ?」


とネトワヤージュを掛けられたハロルドさんが目を白黒させている。

いや、使ったノエリア自身も、目を白黒させてるぞ。


「ふたりとも才能がありますよね」

「そういう問題かぁ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る