ジェンガ





優希が今まで彼女と偽って会ってたのが要ちゃんだって気付いたのがちょっと前。

その時は気のせいであって欲しいってどれだけ願ったことか。


でもそれが真実なんだって分かったのが昨日。

なんか急に胸騒ぎがして優希に電話したらやっぱりだった。

それで今、優希が家に帰ってきて私の部屋に優希を呼んだの。


優希は今までたくさんの女子と関係を持ったけど、肝心の相手を好きって言う気持ちがないように見えた。遊び相手として好き、まるでそんな感じだったから。

それがただの女子ならかまわない、でもなんで要ちゃんなの?


「姉さん、来たよ」

考えている間に優希が入ってくる。優希を弟として、家族としては大好きだけどあたしの大好きな要ちゃんを汚した最低な男、今のあたしにはそうにしか見えない。

「...どう?要ちゃんとやってスッキリした?」

優希は黙ったまま。

「で、要ちゃんに飽きたら次は誰にするの?」

「...要ちゃんはそんなんじゃない」

「へぇ、じゃあ何なの?」


優希がまた黙り込む。ほらね、やっぱり。



「...俺の大切な人」

「だから飽きるとかの問題じゃないし、要ちゃんが俺を好きじゃなくても俺は要ちゃんのことはずっと好きだし大切な人なんだ」


何それ。


アンタは自分が好きな人が自分以外に好意を持ってたとしてもいいの?

「そんなの言葉にすぎないし関係が壊れて要ちゃんが悲しむのはわかってるじゃん!」

要ちゃんが優希のことを恋愛対象として好きなのかは知らないけど少なくとも数少ない信頼できる人ではある、いくら強い要ちゃんだってそんなの悲しいじゃん。


「...俺は自分勝手だから今の関係が壊れようと要ちゃんに一人の男として見て欲しい、もし要ちゃんに好きな人とか素敵な人ができたら俺は要ちゃんを好きなままで手を引く、だからそれまでは要ちゃんといたいんだ」


「なんで要ちゃんにこだわるの」


「いつもは強がってるけどほんとはすごい弱虫で泣き虫で心配性で、だけど甘えベタでそれでいて繊細で...寂しそうだった肌が抱きしめると少し安心したように感じて、それがすごく守ってやりたくなるし愛しい」

それだけ言って優希は立ち上がる。


「...だから姉さんから何と言われようが俺は要ちゃんを諦めないし、寂し思いさせる気もない、それに姉さんがもし要ちゃんをとったとしても要ちゃんが幸せなら...俺はそれでいいから」


それだけ穏やかな顔して言うと静かに部屋から出ていった。

あいつあんなに女の子の好きなとこ言えたっけ。

それにあたしはそんな弱い要ちゃん知らなかった。

要ちゃんが好きなのに親友って関係が無くなるのが怖くて気持ちも伝えられなくて、要ちゃんのほんとは誰かに頼りたいって気持ちも気付いてあげられなくて、関係を捨ててまでも好きと伝えられる優希が羨ましくて八つ当たりしちゃった自分が嫌だ。


でも姉弟だから、あいつが要ちゃんを好きになるのはなんとなくわかるの。

分かっていてもまだ嘘であって欲しい、そう思っちゃうのが1番嫌だ。













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