怒り




映画館に行く前、要ちゃんと2人きりになったら謝ろうとしてたのに謝れなかった。

俺本位すぎる行動で要ちゃんを困らせた挙句、要ちゃんに嫌われたくなくて逃げ出したことを。


映画が終わって要ちゃんを見つけようとして美香ちゃんに話しかける。

「要?帰ったよ」

「...そっか」

美香ちゃんの眉間にシワが寄る。

「...早く行ってやんな、じゃないとあんた、ほんとに顔がいいだけのヤリ目になるよ」

「...」

今まで付き合ってきた女の子達を1人でも本気で好きだったかと聞かれたら自信を持ってはいとは言えない。その言葉に反論さえ出来ないでいたら美香ちゃんに膝を蹴られる。

「いてっ」

「要に嫌われるの、嫌なんでしょ?...それにあたし、優希がそんなやつだと思ってないからこんなこと言ってるんだしね」

やれやれといったような表情を浮かべては笑って俺を元気付けてくれた。


「美香ちゃん、ありがと。俺行かなきゃ」

いいから早く行け、と言うように美香ちゃんがシッシと手を振る。



「優希はそんなんじゃない!」

要ちゃんの怒った声が聞こえる。要ちゃんと一緒にいるのは圭一さん?

すぐに何でもめているのかはわかった。

「要、哀しい思いする前に俺が慰めてやろうか?」


「おい!!」

要ちゃんに圭一さんが触れた瞬間考えよりも先に体が動いてしまった。驚いたような表情で要ちゃんと圭一さんがこっちを見てくる。


「要ちゃんを馬鹿にしないでください」

要ちゃんがそんな慰めなんかで治るはずがない、要ちゃんはそんな誘いに乗ると本気で思っていなくても失礼だし、本気だとしても要ちゃんをそんな人だと思ってることが失礼だ。

「どうせヤリ目だろ?」


「...えぇ、今まではそうだったけどそれ目的だけの女の子にここまで振り回されるのも、悩むのも、ここまで起こることもありませんから。すみませんが俺もうこれ以上は圭一さんに手出さない自信ないのでどっか行ってください」

俺、怒った顔は怖い自信あるんだ。姉さんには負けるけど。そのおかげか圭一さんは逃げるように帰った。



「...要ちゃん、謝りたいからお家、行ってもいいかな」

要ちゃんは小さく頷いてくれた。







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