匂い
朝起きたら要ちゃんが泣いていた。嫌な夢を見ちゃったみたい。小さい時から一緒にいたけど要ちゃんがこんなに寂しい思いをしているなんて知らなかった、ごめんね。
背中を撫でてたら落ち着いたみたい。
「学校...」
「だめ、今日はおやすみしよ」
本人は言ったら嫌がるだろうけど泣いたあとの今の要ちゃんはすごく色っぽいから学校の人達に見せたくない。
「ねぇ、気分転換にお買い物行かない?」
「え...」
「ね、お願い、俺買いたいものあるんだ」
多分慰めたのを借りだと感じちゃったのかな、それでも小さく頷いて出かけてくれるみたい。
駅の中に入っているショッピングモールに着くと、2人でゆっくりとお店を見て回った。綺麗な食器が売ってる雑貨屋さんとか、おしゃれな石鹸がいっぱいある化粧品屋さん、若い女の子で賑わう洋服屋さん。朝何も食べてなかったからお昼に入ったステーキ屋さんで食べたご飯はすごく美味しかった。
あっという間に夕方になって、要ちゃんのマンションに着くと、さすがに今日は帰らなきゃ母さんや姉さんに怒られちゃうからね。
「買いたいものは買えたか?」
「うん、.....要ちゃん、これ」
要ちゃんがお手洗いに行ってるスキに隠れて買った猫の大きい抱き枕。
「...私に?」
「要ちゃんの家にぬいぐるみとかなかったから、俺がいない時に寂しくないように」
「...優希がいなくても寂しくなんか」
そう言いながらも要ちゃん少し嬉しそう。
「じゃあ俺今日は帰るね、また泊まりに来るから」
「.....待ってる」
玄関までさっきあげた抱き枕を抱えながら送ってくれた。何気に気に入ってくれたみたいでよかった。
「お帰り」
家に帰ると優希が彼女の家から帰ってた。
「で、昨日はどうだった?」
二泊目なんだから優希なら絶対手出してるでしょ。
「...やらなかったよ」
このヤリチン男ができないってどれほどの女なの?でもやれなかったくせにやけに優希は嬉しそう。ていうか幸せそう。
「俺1番風呂もらっちゃうよ」
「.....! はーい.......」
気が付きたくなかった、優希とすれ違った時、ほんの少しだけ要ちゃんの匂いがしたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます