泰造さんの旅のおはなし②
高橋はスタッフルームで“鮭のちゃんちゃん焼き風”を頬張りながら、岩居の電話が終わるのを待っていた。
「……岩居さん、施設長は何と?」
「とりあえず、一晩泊めてあげてって言ってた」
「警察に来てもらっても、泰造さんがパニックになってしまうだけですもんね」
「うん。施設長もそれを懸念していた」
岩居は椅子に座り、溜息をついた。
「
「未だ返事が来ないんですよ」
高橋は、テーブルに伏せたスマートフォンを確認したが、職員・萩野からの返信はない。
「高橋さん、俺の魚あげる」
「えっ、いいんですか? ありがとうございます」
高橋は、岩居のトレイから、手つかずの“鮭のちゃんちゃん焼き風”をもらった。
「おいしいですよ?」
「俺、魚が苦手なんだよ」
岩居は「煙草吸ってくる」とベランダへ出ていった。
高橋は“鮭のちゃんちゃん焼き風”とコンビニのサラダを噛みしめ、萩野からの返事を待つ。
「きた……っ!」
岩居が戻ってきたところで、高橋は岩居に報告した。
「萩野さんから返事が来ました。
「萩野くんの近所じゃないか」
岩居は苦笑した。
「岩居さん、笑うところじゃないです」
高橋は大真面目に突っ込みを入れた。
「泰造さん、ご近所では徘徊する人で有名だそうです。それと、それなりに……あるみたいで」
「あるだろうね」
岩居は、マグカップにカフェオレの粉末を入れ、電気ポットの湯を注ぐ。
「まあ、一晩様子を見てみましょう。萩野くんには、俺から連絡しておくから」
「本当ですか? 助かります」
高橋は、食べ切れなかった米飯を厳重にラップに包んで、ゴミ袋に捨てた。
「じゃあ、21時のおむつ交換に行ってきますね」
カフェオレタイムが終わらない岩居にはもう少し休憩してもらい、高橋はおむつ交換の準備を始めた。
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