第43話 良いお医者-頭を下げて謝罪した医者
このT医師は私の大先輩の外科の先生です。日本でも有名な、腕の立つ大学病院の医師でした。
人柄もよく人望があり、患者にもスタッフにも人気のあるドクターでした。
ある時、同じ外科仲間が手術した患者さんが、手術は成功したのに、術後突然亡くなってしまいました。
病理解剖をしても原因は分かりませんでした。
家族が裁判に訴えると騒ぎだし、弁護士3人といっしょに大挙して病院にやって来ました。
主治医は困り果てて、T医師に相手してくれるようお願いに来たのです。
T医師は、腕だけでなく弁舌もたつ、大学の仲間内でも評判のドクターだったのです。
3人の弁護士をうしろに控え、今にも襲ってきそうな気迫で、家族はT医師に対峙しました。
T医師は、にらみすえる家族の前に立つと、
「いくら注意していても、予想できないこういうことが、残念なことに、時には起こるのです。誠に申し訳ありませんでした」
弁解がましいことをいっさいいわずに、深々と頭を下げたのです。
弁解するものとばかり思っていた家族は、あっさりと謝罪され、拍子抜けしてしまいました。言い分けひとつしないその真摯な態度に、大変感銘を受けたのです。(←(^ω^)出鼻をくじかれたのかも)
「言い分けしようものなら、裁判に訴えるつもりでした。心から謝罪してもらい、それを取り下げます」
家族はその場で、弁護士に取り下げを指示したのです。
T医師の誠実な態度によって、間一髪、医療訴訟に発展するのをまぬがれたのでした。(←(^ω^)どこぞの大学病院とは大違いだ)
〈つづく〉
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