第18話 看取りは大仕事

 看取りは大仕事です。


 人が死ぬということは、本人はむろん家族も医療者も、大変なことなのです。(←(^ω^)生きるのだってそうだよね)


「ご臨終です」


 おごそかに死亡宣告をして、集まった家族がワーッと泣き出したとたん、心電図がまたピコタンピコタンと動きだすこともあるのです。


 泣いていた家族もアレ~?てな顔をして、心電図をのぞきこんだりして。(←(^ω^)この時のバツの悪さってありゃしないよ)


 心臓モニターは敏感ですから、家族が泣いて抱きつきでもすれば、ノイズが入って、いかにも心臓は動いているかのように波形が出ます。


 ノイズだと分からない家族からすると、いかにもまだ心臓が動いているように見えてしまうのです。


 そんな時には、素知らぬ顔をして、モニターの電源をそっと切ってしまいます。


 時に、1度止まった心臓が、今わのきわのうめき声のように、本格的に動き出すこともあります。


 死亡確認しようと聴診器片手に構えていると、突然、動き出します。


 知らん顔しているわけにもいきませんから、おおあわてで、また心臓マッサージをすることもあるのです。(←(^ω^)厳粛な場が、急に騒然となりますよ)


 つい最近、呼吸停止してから心停止するまで、40分かかった患者さんがいました。普通はだいたい5分もすると心停止がくるものです。


 呼吸は止まっているのに、いつまでたっても1分間に10拍ほど、モニターで脈打つのです。


 血圧はゼロでも、脈を打っている以上、死亡確認するわけにはいきません。


 1時間近く、止まるのをジーっと待ちました。(←(^ω^)モニターが壊れたかと思ったよ)


 看取る家族も大変です。


「いよいよ臨終間近です」


 病院から真夜中に電話をもらい、家族が急いで駆けつけてみると、患者はまた回復しています。(←(^ω^)こんな時家族には、スイマセンとも良かったねとも、いいにくいよね)


 夜中に起こされ疲れ切って、とぼとぼと家に帰って行く家族。


 さんざん呼び出されてもすべて空振りで、あげくの果てに、臨終に間に合わないってこともままあるのです。


 そうかと思うと、


「今回は厳しいです。覚悟してください」


 そういったのに、1年以上生きた人もいます。


 その間に、


「今度こそ厳しいでしょう」


と、何回、家族にムンテラ(病状説明)したことか。医者も家族も、「今度こそ」に慣れちゃいます。


「ああ、またいってる」


ってね。


 臨終の際にはいろいろなことが起き、まさにその人が生きた人生模様が描き出されるのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る