第13話 人体解剖 その1 解剖実習
医者しか経験できないものに、人体解剖があります。(←(^ω^)したい人なんかいるの?)
解剖は、「死体解剖保存法」という法律に、医師もしくはそれに準ずる者のみが行うとありますから、一般の人が係われるものではありません。医師だけの特権、というより義務といった方がいいでしょう。
はっきりいって、解剖が好きな医者は、解剖専門医以外ではまずいません。(←(^ω^)そうそう)
そういう私めも、医学の進歩のためだと無理矢理自分にいい聞かせて、やっとの思いでやっていたたぐいなのです。
医師を目指す医学生には、解剖実習が必須です。本を読むだけではすまされません。
大きな教室に、ステンレス製の解剖台が20台あまり、整然と並べられています。
台の上には、献体された遺体が1体づつのっています。
遺体を取り囲むようにして、学生が4人1組で椅子に座り、頭から足の先まで解剖していくのです。
それぞれがメスやハサミ、ピンセット、時にはノコギリを持って、午後の半日を、毎日、半年かけて解剖していくのです。
その光景は一種独特のものです。
当たり前です。世間では1体でも死体があれば大騒ぎです。それが20体以上ズラリと並んでいるのですから、そんな光景はほかではまず見られません。
解剖を始める前に、毎回、全員起立して黙祷をささげました。
遺体に向かって一礼して始めます。
そこで遺体もお辞儀したらえらいことになりますが、それは1度もありませんでした。(←(^ω^)当たり前)
献体保存用のホルマリンの臭いは、鼻を突く大変きついものです。臭いに敏感な人は、それで参ってしまうこともあります。
ホルマリンに浸かった身体は、すべてが凝縮していて硬いのです。生きた身体のような軟らかさは全くありません。無理やり例えていうと、ワニ皮のような硬い皮膚なのです。それにメスを入れ、ハサミで切って、ピンセットでほじっていくのです。
これがまた大変な作業です。
例えば上腕を解剖します。皮膚を切開してから、その皮膚を皮下組織からはがします。皮下脂肪をピンセットでこまめにほじくって、除いていきます。そして目指す血管や神経を、1本1本露出させていくのです。
さすがに解剖学の教授ともなると慣れたものです。
遺体の皮下脂肪でべたべたに汚れた解剖書を、解剖台の脇で指をなめながらめくって読んでいました。私などはそれを見ただけで、吐き気がしていました。(←(^ω^)弱っちいね)
解剖実習は医師になるための第一関門です。
その激務に耐えられず挫折して休学する学生や、試験に合格できずに留年してしまう者が、少なからず出てきます。
何せ解剖学で覚えなければならない名称は何千とありますから、解剖の作業自体が大変な上、それを覚えなければならないとあっては、生半可な気持ちではやれないのです。(←(^ω^)これだけやって、臨床で使う名称って100あるのかな)
〈つづく〉
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