第12話 医者の仕事は肉体労働 - 夜昼なしの年中無休
医者になる前は、いのちを救う白衣のヒーローのように思っていましたが、いざなってみると、その仕事のしんどいこと。(←(^ω^)本当だよ)
とりわけ救急を担当する医者ともなれば、夜昼なしどころか、年中無休といっても過言ではありません。
昔はポケットベル、今は携帯電話(スマホ)に、四六時中患者の病状報告が入ります。帰宅途中に電話が鳴り、そのまま病院へトンボ返りということもよくあるのです。
だいたい夜中に、当たり前のように起こされる職種が、ほかにありましょうか。当直勤務ならいざ知らず、日勤を終えて自宅で休んでいても、当然のように呼び出されるのです。
知人に消防署の人がいました。彼は数年でその仕事を辞めてしまいました。
彼いわく、
「夜中に起こされるのはたまらない」
人間の身体は、夜には眠るように造られているのです。
当直にも寝当直といって、居るだけで済むような当直もありますが、一睡もできないような忙しい当直もあるのです。一晩に5人以上の急患が来たら、寝ている暇はまずないでしょう。
一睡もできないからといって、翌日は休みになるかというと、さにあらず。当たり前のように通常勤務につくのです。
友人の外科医の中には、手術後には睡眠薬を飲んで入眠し、起きると気付け薬を飲んで気合を入れるという医者もいたのです。
「外科医の7割、当直後手術」と題して、当直勤務のアンケートがネットに(2011年9月30日)載っていました。
その記事には、
『外科医の約7割が、過去1~2年に当直明けにも手術に参加した経験があり、このうち約8割は手術の質が低下することがあると感じているとのアンケート結果を、日本外科学会が発表した。
2007年に発表した同様の調査と比べ、当直明けの手術経験の割合も勤務時間もほとんど変化がなく、里見理事長は「外科医療は医師の頑張りで支えられているが、危機的な状況にある。待遇改善をしなければならない」と訴えた。』とあります。
こんなことでは医療事故が起きるのは当たり前だと、私は前々から危惧していましたが、昔も今も外科医の激務は変わりないようです。
タクシー代りに救急車を使う人が増えて、社会問題になっています。
「急患です」
夜の当直は容赦なくたたき起こされます。眠い目をこすりながら気を引きしめて廊下に出てみると、やつれたおじさんが白いヘルメットをかぶって立っています。
「おやこの人は?」
何と!やつれた顔をしているのは夜番で疲れた救急隊のおじさん。むこうを見やれば、元気そうな顔をした患者が、医者のおいでを今や遅しと待っています。
救急でもないのに自分の都合で夜中に来る横着者もいます。そんな時、意地悪い私などは、
「入院しなさい」
鎌をかけてみるのです。するとにせ医者ならぬにせ患者は、むっくりと起き上がって、
「そんなに悪くはありません」
『「背中かゆい」と119番、安易な救急車利用続々』と題して、またもやネットに載っています(2011年9月27日)。
『不適切な救急車利用とみられる119番通報に横浜市が頭を悩ませている。市内の救急車利用は8月末時点で約11万274件と、昨年同期比で5444件増え、過去最多を記録する勢い。市消防局は「適切な利用を」と呼びかけている。
今年1-6月にあった不適切な救急車の使用事例として、
◆子供を病院に送ろうとしたが、タクシーがつかまらない
◆背中がかゆいが、手が届かないので自分で薬が塗れない
◆朝から小便の出が悪くおなかが張る。到着した救急車に自力で乗車した
◆夕方、シャワー中に鼻をかんだところ、鼻血が出た
◆暴飲暴食で二日酔いになり38.5度の熱が出た
を上げています。』
最近声高に叫ばれる医療の荒廃は、医者一人のせいとはいえなさそうです。
医者は人命への畏敬の念があるからこそ、夜昼なく働いているのです。
追伸:『4人に1人が「うつ」になる世界で「医者」を殺さないために』という記事が最近ネットに載っていましたよ。(←http://www.huffingtonpost.jp/jcej/post_7645_b_5349266.html)
〈つづく〉
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