第6話 医師確保は死活問題
いくら大病院でも医者がいないことには、はじまりません。医者が集まらないために閉鎖となる診療科が頻発して、マスコミをにぎわしています。
大学病院は自分のところで医師を養成していますから、病院に勤務する医師はまだ潤沢です。
ところが一般病院では、激しい医者の争奪戦が繰り広げられているのです。
医者もサラリーマンと変わりなく、行きたいところにみんな行きます。(←(^ω^)医者もサラリーもらって働いてるんだからサラリーマンだよね)
特に臨床研修制度がスタートした2004年から、優良な研修プログラムのある病院に医者が集中しました。
その結果、大学医局に入る医者が減ってしまい、大学から一般病院に医師を派遣するという従来の構図が壊れてしまいました。
大学を卒業したらその地方には残らず、みんな都市の研修病院に行ってしまうのです。
田中角栄内閣(1973年)の一県一医大構想が、見事にはずれてしまったのです。
大学の医局では、研修というより上司の雑用係にされてしまって、ろくな研修を受けられません。
特に外科医などは、研修医が手術に手を染めることなどなかなかないのです。
私のお目にかかった外科医の中で、大学医局に10年もいるのに、胆嚢切除1つできない医者がいました。
出張病院で腕を磨くというのが、大学の研修事情なのです。(←(^ω^)“大学”の名が泣くね)
それに比べて研修指定病院は、素晴らしい研修プログラムを作って、全国からたくさんの医者集めをするのです。
かくして必然的に、都市に医師が集中してしまうのです。
都市に医師が集中していても、都市近郊の公立病院や日赤病院などでは、医者は勤務先から少し離れた都市部に住んでいます。マンションなど手に入れれば、そこから通うのはしごく当然のことです。
医者は勤務時間が過ぎると、さっさと帰宅の途につきます。医者だからといって、それは駄目だという法律はありません。
昼間はにぎわう都市近郊の大病院も、夜ともなれば、最低限の医者を残して無医地区(←(^ω^)変な表現)と化すのです。
ちなみに私は、勤務する病院を変えるたびに転居しました。結果、何と!10数回の引っ越しとあいなりました。
すぐ駆けつけられるところに住みたいと思ったからです。(←(^ω^)卒業したての頃は病棟に住み込んでいて、患者と間違われたよ)
弁解しておきますが、病院を10数回変わったのではありません。借家ですから、数年に1回くらい引っ越す羽目になったのです。
私の2人の子供は、「自分の故郷はどこか分からない」と笑っています。(←(^ω^)親の顔が見たいね)
地方の病院には、新幹線で通勤していた非常勤の医者もいました。新幹線の時刻表に合わせて、診療が行なわれるのです。
その時刻が近付くと常勤の医者に、
「あとはよろしく」
そういって、帰って行ってしまうのでした。
専門性の高い科で、医者がいないと困りますから、周りは目をつぶっていたのです。
地方の病院では、やっとのことで確保した医者をのがすまいと、あの手この手で、医者を引き止めます。
医者がいなくなると、下手すればその診療科ばかりか病院そのものが閉鎖されてしまうことになりますから、医者の来手の少ない地方では、医師確保は死活問題なのです。
官舎と称して素晴らしい医者の住まいを提供したり、特別手当を支給したり、医局に図書ならず、遊興具一式(麻雀など)をそなえたりするのです。
地方の公立病院の院長が笑っていってました。
「医局で麻雀をやらせておけば、ただで医者が待機してくれて、大助かりだよ」(←(^ω^)それにしても医者は麻雀が好きだね。ま、いいか。患者のためにはなるならね)
またある中小病院では、こんなこともありました。
医者とナースがケンカして医者が辞めるといい出したのです。
事務長が仲裁にはいり医者をなだめると、今度はナースが辞めるといい出したのです。
「ナ-スなら募集すれば来る。医者はそうはいかない」
事務長はそういって、医者の言い分を聞くことにしました。
ナースがそれに反発して半数が辞めてしまい、病棟は数カ月間休業状態になったのです。
これだけ優遇されれば、医者は殿様になりますよね。(←(^ω^)うん、なるなる)
〈つづく〉
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