第3話 先生と呼ばれないと不愉快になる

 医者になりたての頃、「先生」と呼ばれてきまり悪がっていた私なのに、それに慣れると今度は反対に、そう呼ばれないと不愉快になるのです。


 だいたい偉くも何でもないのに、ちょっと学校の成績が良かったか、はたまた親が金持ちだったくらいで、先生と呼ばれるようになるなんて、おかしな話しだよね。


 これまたナースが愚痴ってましたよ。


「あの医者の出身校、私より低いレベルの高校よ」


ってね。


 辞書(大辞林)に、先生とは「教師、医師、弁護士、国会議員などを敬って呼ぶ語」とありますが、学校の教師以外は、先生と呼ばれるほどの代物ではありません。


 ところが習性とは恐ろしいもので、およそ先生らしからぬやからでも、いったん医者になろうものなら、先生と呼ばれないと、気分も機嫌も悪くなるのです。


 目の前の患者に「さん付け」で呼ばれようものなら、医者はむーっとして、顔色を変えることでしょうね。(←(^ω^)勇気があったら一度試してみては。責任はもてませんけどね)


「にせ医者が医師法違反で兵庫県警に逮捕」


 2014年6月10日に、こんな新聞記事がありました。


 彼の供述では、


「先生と呼ばれて大変気持ちが良かった」


とのことです。


 やはり誰もが、先生と呼ばれてみたいものなのですね。


〈つづく〉


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る