第15話 増える伝説の武器
「とりあえず状況を整理しよう」
「は、はい」
俺はレインと共に居間の椅子に座っていた。そして眼の前には、毛布にくるまった元全裸の少女のケイがいる。
とりあえず真っ裸ではまずいということで毛布をかぶせたのだが、色々な所が無防備で見えまくっていた。
そこから視線を外しつつ、俺は彼女に向き合った。
「ケイ。君は俺が持っていた伝説の武器……でいいんだよな?」
聞くとケイは、自分の体に巻いた毛布を手で遊びながら頷いた。
「いえす。ケイはますたーの手でレベル200まで育てこまれた、ケリュケイオン。それ以外の、何物でもない」
舌っ足らずな声で、先ほどと同じ答えが帰ってきた。
小さな背丈と声のせいで幼く見えるが、喋り方はしっかりしている。とても、普通の少女には見えない。
だが、それだけで彼女がケリュケイオンの人化した姿だというのは、ちょっと信じにくいものがある。
なにせ、人化した瞬間をこの目で見たわけではないのだから。
「レイン……この子の言ってる事、本当だと思うか?」
「そう、ですね。何となくですが、私と同じような波長を感じます。それに、私たちがまだ武器の姿しかもっていなかった頃、武器だけに通じる言語で喋っていたのですが、その時のケリュケイオンさんと同じような喋り方をしている気はします」
「武器だけの言語とかあるのか」
「はい。簡単な意思疎通しかできない念話みたいなものですけどね。ただ、それくらいの共通点はあるにしても、断定は難しいですね」
「だよなあ……」
などと喋っていると、ケイが首を傾げた。
「ますたー、ケイの言う事、疑ってる?」
「疑っているというか、単純に情報と証拠が足らなくて判断が付かないってだけでな……。何か証拠になるような事とか話せるか?」
「証拠?」
「記憶とか思い出とか……使えるスキルとかでもいいんだが。あるか?」
そうやって尋ねると、ケイは、んーと首を傾げてから、
「いえす。ケイが覚えている最新の出来事は、天魔王ユングを、杖バージョンのケイの
「それを知ってるって事は……本物っぽいな……」
「ですね。あの場には私とラグナさんしかいませんでしたし」
あの瞬間をどこかで見ていたとしても、少し詳細を知りすぎている。
そんな事を思いながら、俺はレインと頷きあう。そして次に何を言おうかと頭を動かしていると、
「ねえ、ますたー。ますたーなら、ケイのステータス確認すれば、早いよ?」
「ああ……そうか。そうだったな。ステータス看破ができるんだった」
対人に使わないようにしていた癖がイマイチ抜けないな。これからは出来るだけ初手看破するように心がけよう。知っておいて悪い情報がないんだし。そう思っていると、
「いえす。触りながら、確かめて」
そう言って、ケイは俺の横へ、とててっと近寄ってくる。
そして俺の体を掴みながら、天使の羽のようなものが付いている頭をぐいっと突き出してきた。頭を撫でて欲しがっている子供みたいだ、と思いつつも、
「とりあえずやってみるか……」
俺はその突き出された頭に触れて、ステータス看破を使ってみた。すると、
【伝説の武器ケリュケイオン (レジェンド)lv200 職業:伝説の杖兼ライトニングマスター(雷系魔術師)】
「うわ、ホントに出たよ」
完全に、目の前の少女から、伝説の武器であることを示すウインドウが出ている。間違いはないようだ。
「本当にケリュケイオンなんだな……」
「いえす。やっと分かってくれた。ますたーは用心深いけど……知ってもらえて、ケイ嬉しい!」
ケイはそう言いながら、俺の体に抱きついてくる。
中々の勢いだ。
「おっとっと。いや、なんというか、悪かったよ。疑って」
「分かってもらえたから、いい。でも……もっと頭を撫でてくれると、ケイは喜ぶ。疑われた心の痛みが消えるくらい喜ぶ」
「了解了解」
このケリュケイオンは要求もしっかりしてくるタイプのようだ。まあ、可愛らしいので別に構わないけれども。なんて思っていると、
「羨ましいです……」
レインがそんな事を呟きながら、ウズウズとした表情になっていた。
彼女の視線は明らかに俺の手の方に行っている。だから、
「あー、レイン、君もこっちに来てくれ」
言うと、レインの表情がパアッと明るくなった。
「え……い、いいんですか!?」
「ああ、君のステータスも確認しておきたいからな」
「は、はい、そういうことならどうぞ!」
そうして、即座に近くにやってきたレインの頭を撫でると、
【伝説の武器レーヴァテイン (レジェンド)lv150】
彼女のステータスが表記された。
どうやら、天魔王から食らったバッドステータスは治ったようだが、レベルは戻らなかったようだ。
ただ、それが分かっただけでも、僥倖だ
「なんというか、やっぱりこのステータス看破は便利過ぎるな」
「いえす。でも、これはますたーだけしかできないことだから。ますたーにとっては、当然でも、凄いことだったりする」
そしてケイは、俺以上に俺を知っているような口ぶりで、そんな事を言うのであった。
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