2話 0日目 連れて帰ったよ

「で、お前は名前はなんていうの?」

「吾輩は猫である、にゃまえはまだにゃい」


結局学校を静かにバックれて二足歩行の猫を連れて帰宅した。

すれ違う人々が誰もヒソヒソしないし、こいつがあんまりにも景色に馴染んでいるものだから

あれ?二足歩行の猫って珍しくないんじゃね?たと一瞬思ったがなんてことはな…くはないが、この猫はファンタジーな生き物だった。

つまりは俺にしか見えてないのだ。


「ぼくは君だけの為に現れた存在にゃからね~」


今日の夕飯何にする?くらいの軽さでいうが普通以下に暮らしてきた僕には非日常すぎてまったくついていけない。

漫画の主人公の順応性の高さに改めて尊敬の念を抱く。

まったく、ただ自宅に帰るだけなのに疲れてエラい体力を消耗してしまった。


結局あーだーこーだ言いながら気付けば自宅に着いていた。

両親は現在旅行でイタリアに行っていていない。

万歳!フリーダム!な心境だ。

正直なとこいじめられている手前、

学校はどう?なんて無邪気に聞いてくる親の目がなかなか直視出来なくて心苦しかったからちょうどよかった、なんて、思っている。


一階の電気もつけず早々に2階の自室へ引きこもる。

猫は器用に二足で階段を上っていて不思議すぎる感覚になんだか目眩がした。


踏まれて汚い鞄を床に投げ捨て服も脱ぎ捨てる。

パンツとTシャツの標準装備になりベッドの上で胡座をかいて、同じように目の前でベッドにちょこんと正座している猫と向き合う。


そして話は冒頭に戻る。


「猫じゃなんか呼び辛いから、名前でも考えるかー」

「にゃー、どんな名前にや??」


尻尾が期待で揺れている、なんかかわいいな。


「……にゃんこ」

「にゃ、安易な」


数秒考え何も浮かばないので適当に名前をつけた。

案の定抗議された。

仕方ない……もう1度考える。

そうだ!


「……にゃんこ先生?」

「著作権的な何かに引っかかりそうな名前は嫌だにゃ」


またダメだったようだ。

もういいや、めんどくせ


「……ただのにゃんこで」

「……まだマシかにゃ


猫がやれやれと呆れたような表情と動きで諦めた。

名付けたのでさっそく名前を読んでみる。


「にゃんこ」

「はいにゃ」


気の抜けたような返事が来た。

こいつ気にいってないな、

まぁそうだろうな。


「とりあえず、よろしく?」


片手を差し出す。


「はいにゃ!」


ワンテンポ遅れてにゃんこも片手?片足?を差し出した。

猫だから握れないので俺は包み込むようにその手を握り上下に少し振った。


なんとなく明日から何かが変わるそんな予感がした。


1通り終わって一気に脱力感が襲ってきて耐えきれずベッドに仰向けに倒れた。

ぼふんと柔らかい布団と人の体重を受けてスプリングがギシッて音を立てた。


ああ、今日は疲れた……風呂は……朝入ろう。

僕は寝落ちた。


なんか完全に意識が消える前に

「綺麗好きにゃんで勝手にシャワー借りますにゃん」

とか聞こえたがきっと幻聴だろう。

そうだろう。

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