幼女VS共産主義
理性の狡知
第一回世界共産主義大反省会
世に言う奇跡というものはまったく不愉快極まりない。
奇跡によっていつかは救われる。自分の恵まれない運命は奇跡によって救われる。甘ったれた負け犬の
斯くて、無能は底辺に這いつくばり、世に蔓延る。不平不満はうなぎのぼりで統治システムは窒息死一歩手前となる。奇跡と民主主義の
奇跡を顕現させれば世界が滅びかねないのは自明の理。
人の世は神の介入を必要としていない。さるシカゴ学派総帥の言葉を引用するまでもなく、神の介入は有害だ。神の仕事は、神の見えざる手だけで十分。それ以上は過ぎるというものだ。
ところで、テレビのワイドショーで映るテロを見て酷いねと呟いてランチに戻る常識人諸君。
有能なる諸君は勿論奇跡を信じないのでありましょうか?
そうですか、そうですか。いや、何。ただの確認ですよ。
奇跡を信じるのは無能の印。文化相対主義という名の無関心を貫く有能な常識人諸君は無神論者に違いない。神の助けが調和を乱すとすれば、断固として常識人諸君は神の助けを拒否するに違いない。
神の恩寵の拒否。
それこそが理性と自由を信奉する近代人の理想像だ。否、寧ろ義務と言って良い。
さすれば、さぁ皆様ご一緒に。
理性と自由を信奉する有能なる常識人諸君ならば、ご唱和を。
「死ね!!
どうも、申し遅れました。ターニャ・デグレチャフであります。
「
「その齢で神への恨みを口にするとは!!そのとおりだぞ、同志よ!!宗教なぞアヘンだ、ア・ヘ・ン!!無知なる大衆を騙くらかしおって!!許さぬぞ神め!!」
おぉ、ここにも理性と自由の信奉者が。感涙に
……ん?同志?
「そうだ、そうだ!!神など
おぉ、理性と自由の信奉者がここにもまた一人。
……下部構造??
「下部構造の根本的革命によって、我々は宗教の鎖から解放される。来るべき共産主義社会の実現に向けて革命を!!」
おぉ、近代人の理想を体現するものがまた一人。
……って、これ。
共産主義者だ。
どうも、ご挨拶申し遅れました。
共産主義者に囲まれるターニャ・デグレチャフであります。
ところで、常識人諸君に質問があります。
貴方は無神論者ですか?
無神論者?なら運が良い。貴方は
無神論者ではない?なら運が悪い。貴方は
真にこの世は複雑怪奇。
根っからの
会場は見渡す限りの赤だ。
あっちを見ても、こっちを見ても、
右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても、居るのは
地獄とはきっと、ここのことを指すのだろう。
「諸君!我々は振り返りの時を迎えている!!我々の革命を総括せねばならないのだ!!世界革命は未だ成らず!!!厚顔無恥な
革命の鐘は未だ鳴らず!!!収奪者は収奪されなかった!!」
「自己批判だ!自己批判しろ!!!」
「これは修正主義だ!貴方ともあろう方がなんということを!!!」
「演説をやめさせろ!引きずり下ろせ!!!」
現実から遊離した左翼特有の空理空論は内ゲバに至るということは歴史が証明している。無能どもの自己陶酔。反吐が出る。
計画経済なんぞ、無能の為のシステムに過ぎない。
無能のためのシステムが長続きしないということが、この無能どもには分からないらしい。無能が無能のために努力して何になろうか。その貴重なリソースを他の分野に振り向けたほうがよほど有益というものだ。
これだから、市場経済を理解しない無能は困る。
その点、壇上で理論の修正を図ろうと提言する司会者は肥溜めの中でもまだマシな糞野郎だ。糞野郎に違いはないが。
効率性こそが世をあるべき姿にするのだ。介入は、むしろ有害だ。彼ら共産主義者がやろうとしていることは、神の恩寵と本質的には何も変わらない。神を憎む共産主義者が神と同じ思考なのは全く出来過ぎた皮肉だ。
斯くて、システムは死に至る。共産主義が崩壊したのも頷ける。
「同志諸君!我々はいまこそ原点に立ち返るときなのだ!いまこそ原点へ!!人間疎外を解決すべく我々は理論を再構築せねばならない!!!」
「『資本論』が間違っていると言いたいのか!?」
「賢明なる同志諸君!耳を傾けよ!!!我々の理論的指導者がここに居る!!!」
「一体何を言っている!!??」
「同志諸君!!我らが尊敬すべき指導者が!!『資本論』のあの著者が沈黙を破って遂に現れた!!」
……え?何言ってるんだこの司会者は。『資本論』でも読みすぎてトチ狂ったのか?
「カール・マルクス!!どうぞ!!!」
「おい…貴様ら………」
「子供ではないか!!!」
「この小娘がマルクス!?そんなわけ無いだろう!!!」
「……黙れ。黙れ。黙れ。黙れこの
一人の少女が地団駄を踏む。本気で言っているのか、この女は。
自分がカール・マルクスであると勘違いしちゃった電波系じゃないのか。
勘違いするにも、その人選はないだろう。君が人事部の部長だったら即クビだ。人を見る目がなさすぎる。よりにもよって、なんで世界で最も反体制的な男に憧れるのだ。意味がわからない。
「そこに居直れ愚か者共。吊し上げだ。出てこい!!レーニン!!スターリン!!毛沢東!!ポルポト!!」
ハッハッハ。ナイスジョーク。皆とうの昔に寿命で死んでいる筈だ。
……あれ?そのはずだったよね?
「マルクスさん、堪忍してつかぁさい」
「いや、俺何も悪いことしてないし」
「仕方なかったんや、許してくれ……」
あれ、何処かで見たことある人達だぞ。
「あと、デグレチャフ!!お前も登壇しろ!!!」
「……は?」
「神直々のご指名だ。市場原理主義者のお前を論破しなければ、私は輪廻から外れて消滅するらしい。糞ったれの神が私の事を消滅させたいのならすれば良い。だが、やつに復讐せねば気が済まない。私に論破されろ。そしてお前が消えろ」
「マルクス様のお呼びだ!!!早く登壇しろ!!!!」
「総括だ!!!総括しろ!!!」
チッ……。こういうことか存在Xめ。小癪な真似を。
目のイッてる共産主義者の前でマルクスと討論しろ、という訳か。
ただの元サラリーマンに何という過大な要求をするのだ存在Xは!世界最悪のニートの主張を曲げさせるなど不可能だ!!私の言うことを聞くだけの頭があればニートも生まれていないし、ソ連だって生まれてないだろう!!
「怖気づいたのかね?ターニャ・デグレチャフ君?」
糞め。周りが共産主義者だから、逃げようにも逃げられん。演算宝珠があれば、一帯を吹き飛ばして逃げるところだが、どうにもならん。このまま紅衛兵に頭を刈られて、「私は裏切り者です」と宣伝する
かくなる上は、島津の退き口、或いは真田丸、もしくは橋の上のホラティウスにならねばなるまい。前門の
赤と赤に挟まれた所で私は赤にはならぬぞ、カール・マルクスよ。
「……受けて立ちましょう。共産主義者の教祖よ」
「私は
「何を言いますか、カール・マルクス。貴方の思想でどれだけの人間が赤に染まって、土と還ったか。分からぬ貴方ではあるまい?」
「……まぁ、よい。それはおいおい分かるだろう。さて、討論を始めよう。っとその前に。こっちはこっちで総括の必要がある」
「……?」
「内ゲバだよ、デグレチャフ君。修正主義者には罰が必要だ。そこで待っておれ、資本主義の犬め」
まったく。何を言い出すかと言えば、このマルクス。どうやら修正主義者を本気で吊るし上げにしたいらしい。修正主義者を次々と吊るし上げにした所で、最後に残るのはお前だけのような気もするが、まぁ良い。共産主義者が減るのは良いことだ。
死んだ共産主義者だけが良い共産主義者だ。
すまないね。マルクスが言い出したんだ。私の責任じゃない。精々私が逃げやすいように死んでくれ。
☆☆☆☆☆☆
コメンタリー
やっちゃった。やっちゃった。勢いに任せてやってしまった。すまないね、アニメの幼女戦記を見るとテンション上がっちゃったんだ。
という訳で、
まぁ、「デグレチャフと学ぶ共産主義」、みたいな感じかな?
更新は不定期です。マルクスの文献を読みつつになると思うので、すごく遅くなるかも……。実は第一次世界大戦を題材にした小説も書いておりまして、そちらの方を優先させたいので、こちらはついでです。
それでは、自称常識人の皆々様。また、いつかお会いしましょう。
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