第12話 ー千客万来の章 4- 祭りだ 全員集合
曰く、
曰く、女性は参加費、
曰く、参加男性の多くは、桶狭間の戦いで勝利に貢献した強者たちであるとのこと。
曰く、身分の差、出自に関係なく参加できるとのこと。
この話は、近隣諸国の
「うっほ。あのうつけ、また変なことを考えてやがる。どうせ、先の今川との
「下級兵士をそこまで手厚く保障する意味があろうものか。あのうつけが
この時代に、一般的に下級兵士の給料は支払われてはおらず、恩給のかわりに他国の村を略奪していいとの免状が渡される。略奪には当然、人さらいも含まれている。
合戦後の人身売買において、さらわれたり、捕虜となった者は、その家族が身代金を払うことで解放される。これがなかなか良い金になり、武将同士の戦いでも命をとるより捕虜にすることを優先する者もいた。
戦国の世は、武将伝よろしく、きやびやらかな側面を持ちつつも、被害を受ける民にとっては生き地獄でもあった。
「信長さまは考えることはアレっすけど、民が好きなんッス。だから、きっといいことやってるんッス」
がっしりとした体格の美丈夫な行商人が、そう言った。
「でも、参加したら、二度と
「大丈夫ッス。たぶん、信長さまなら移住先も用意してるッス。というより、こんな商売もしにくい土地で暮らすより、心機一転、新天地をめざすのもいいと思うッスよ」
「とはいっても、家族に迷惑がかかる。むりだ…。ああ、信長さま、この村を占領してくれないかな」
ははっと農民たちは乾いた笑いをする。信長の兵たちは給料をもらっており、さらに給料をもらうかわりに略奪を禁止されている。
「わ、わたし、行ってこようかな!わたし、3女だし、いてもいなくても家にはもともと迷惑もかからないし!」
「おっ、いくッスか?舟をだしてるとこくらいまでは護衛するッスよ」
わたしも、わたしもと、10人近くの妙齢の女性たちがでてくる。
「このまま、この村にいても、
「わかったッス。じゃあ、離れないようについてくるッスよ。家族とは今生の別れになるかもしれないッスから挨拶はしとくッス」
そんな家族柄でもないんだがねぇと、女性たちは少々悪態をつきながらも、家に一旦、帰っていった。
行商人は連れの10人の男たちに指示を飛ばし
「おっし、この村は成功ッス。時間がないから、ここの女性を舟場に送ったら、次の村にいくッスよ」
「わかりました、前田さま!」
「思ったより、あまり、ひとが集まらないッスね…」
事実、各大名は、村からひとが流出しないように、もし、逃げるものあらば、村や家族に制裁をくわえる。したがって、家を継ぐ長男や、もしもの場合の次男、そして長女は、ほとんどその領地から出ることはできない。常時、家族を人質に取られているようなものである。
ただし、部屋住みの3男坊、4男坊、3女などは、そもそも家族にカウントされない場合が多い。そのため、ある程度は自由なのだ。
「まあ、数をこなすのが一番ッスかね」
そうこうしているうちに、さきほどの女性たちがもどってくる
「またせたね。そういえば、あんた、名は?」
「
「ふーん、まあいいか。あんたも
「できれば、そうしたいッスけど、
「そうかい?じゃあ、ま、舟場までの護衛頼むよ、
一方、
「ようよう、兄ちゃん。この立て札の話、マジ?」
町人にしては身は引き締まっており、伸長165センチメートル程度の男は、その伸長と変わらぬ長さの槍の穂先に革をかぶせて、それを左肩に預け、食い入るように立て札を見ていた。
「なあなあ、男性参加費500文って高いよね。まけてもらえないのかな?」
話しかけられたのは、織田家足軽組頭の
「ここの
「んや。その関の野郎に
男は、へっと鼻を鳴らす。
「ふむ。そうであったか、それはいらぬ詮索、すまぬ」
「いいってことよ。で、この立て札のことだけど、他国の浪人でも参加可能なの?」
「ああ、もちろん。男なら参加費を払ってもらえれば、一向にかまわぬ」
男は、そうかそうかと頷きながら
「確か、織田家にはうちの親族が
「ほう、誠か。そういえば、そなた、名はなんともうすか」
「俺か?俺の名は、
「滝川、滝川。ああ、
「そうそう。その通り。んー、500文かー。益重兄貴に借りるか。いま、益重兄貴はどのへんに勤めてるんだ?」
「わたしの記憶が正しければ、確か、
「そうか、ありがとさん、役人のひと。そういや、あんたの名前、聞いてなかったな」
「
「
「ここから10キロメートルも西にいけば、関のやつの支配下だ。もし向かうなら、変装なりして向かうといいぜ。それじゃな!」
時は進み、9月初旬、
「うっほん!続々と
「は、はい。3丁目の宿5件にも、あ、空き部屋を確保しておきます!」
「設営用の材木が足りぬのじゃ、それと大工の追加手配も頼むのじゃ!」
「な、
「食材の調達のほうはどうじゃ?あと料理人は
「は、はい!の、信長さま付きの料理人も、つ、つれてまいります!」
津島では収穫祭も同時に行われ、さらに
「すいませーーーん!すいませーーーん!
10人ばかしの女性の団体さまが、会場の入り口にたたずんで、だれかいないかと声をあげている
「はーいはいはい。お嬢様がた、こちらですよ、どうぞどうぞ。こちらの帳面に記帳してくださいねー。そのあと、宿にお送りしますんで」
と対応してるのは、織田信長本人である。彼は異常な祭り好きである。大名でありながら、すすんで下働きを買ってでていた。
「あ、あのー。の、信長さまにあんなことさせて、い、いいんでしょうか。確かに助かります、が」
「うっほん。どうせ、止めたところで、あの馬鹿がやめるわけがないのじゃ。まだ、目に見えるところに置いておいたほうが安全なのじゃ」
「はいはい、10名様ごあんなーい!お部屋は、5人1組で相部屋になるけど、我慢してねー」
信長のいきいきとした楽しそうな姿を見、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます