第10話 ー千客万来の章 2- 持たざる者
「おらぁ!
「嫁こさほしい、嫁こさほしい、嫁ほしいぞー!」
お金でどうにかならないかとの
「我々はー、
「彼女が、お嫁さんがほしかったのです!」
兵士たちは、両ひざを地面に落とし、宙を見上げ、涙を流していた。
「お給金で春画は買えます。でも彼女は、嫁は買えないんです」
春画とは現代日本で言うところのエロ漫画である。
「モテ期が来ると言われ、信じて命を賭したのです」
実際、兵士の約半数にはモテ期は到来していた。伏線建築をしていたあの兵士も気になる娘に告白し、彼女を得ている。だが、モテ期がこなかったものが半数いたのも事実である。
「人間、持つ者、持たざる者。二種類が存在します。それは彼女・嫁持ちか、独身者です」
織田家の兵士たちは、本来、嫁をもらうことがほぼ絶望的な状況の農家や土豪の3男坊、4男坊であった。しかし、織田軍に所属することになり、数々の死線を潜り抜けることで、モテ期が到来し、見事、嫁をもらったものたちがいる。
その存在が希望であり、また、つきつける絶望でもあった。いわば、なんらかの先天的なものをもった持たざる者たちである。
持たざる者たちは、最後の希望、
「
鳴りやまぬ
先には直訴状と書かれた手紙が差し込まれていた。
「ひとつ。織田信長さまは、先の大戦前に約束された
「ひとつ。織田信長さまは、今回の騒動において、兵士に対して罰を与えないこと」
「ひとつ。そのかわり、騒動の首領たる
ううむと、
「あい、わかったのじゃ。この書状は必ず、
「すまぬのじゃ。わたしの安易な発案のせいで、ここまで事態が大きくなってしまったのじゃ」
「まあ、それに同意したのは、ワシですし、そもそも兵士たちに約束してたのを忘れてた以上、責任の半分はワシにあります」
信長は、落ち込む
「兵たちに罰を与えることは、今回はしません。それは必ず約束します。あと、
「え、まじでやるの?」
「兵士300人の
いいえと信長は言う
「やるならもっと大規模にやります。1千、いや2千人規模で」
ぽかーんとした顔の
「な、なにいってるのかなあ、この馬鹿は」
はははと信長は笑い、さらに続ける
「将来的には、そうですね。1万人規模でやりたいです」
「ああ、もう、この馬鹿はああああ」
「まあ、未来のことは置いておいて、まずは目の前の300人をどうにかしましょう。
ははっと
「世の中には嫁の貰い手のない3男坊、4男坊がいるのであれば、
「
「なるほど。近隣から見向きもされなかったやつらでも、土地が変われば好みも変わる。それらの女性をあてがうわけか」
「はい。あと男性参加者からは500文の参加費を取ります。女性は
「それじゃあ、男性参加者から不満がでないか?」
「男性の参加費は、女性の旅費や滞在費に充てます。それなら文句はでないでしょう。それでも足りないと思うので、城からも援助費だします」
それとと信長は続ける
「もちろん武将の方々も参加していいですよ。ただし、ちょっと多めに参加費払ってもらいますが」
「え、まじ?俺もいいの?」
「のぶもりもりの参加費は5貫ですね」
「ええええ。高すぎでしょおおお」
「こういう会合は、歳が高いほど費用が高くなるってのが常ですから、あきらめてください」
「この際、まだ結婚してない若い武将の方々全員、参加してほしいですね。将来のお家のためにも、費用負担のためにも」
「ああ、それいいですね。じゃあ結婚してない
「参加費、ひとり2貫といったところでしょうか」
「そうですね。ではそのように運びましょうか」
信長は右手でもった扇子の先端をぽんと一度、左手に打った。
「さて、次は会場ですが、
「さすれば、
津島といえば、
「津島ですか、なるほど。いい案です。北伊勢にほど近く、美濃からは木曽川を下ればすぐですし」
「それと津島なら宿の手配も楽です。数も多いですからね」
兵士300人、武将や女性を含めれば、参加者700人はくだらないという壮大な
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