第6話 ー桶狭間の章 6- 文官と武官
「うっほん。岡部元信と言えば、まさに忠臣の
「ならば、貴殿に何か策がござるか?」
「そこでですじゃ。ほれ、そこの今川義元の
「き、貴様!敵に
「岡部はただ仇を討つために動いておるのじゃ。言わば死兵。戦勝で士気があがっている我が軍といえども苦戦は必須じゃわい。それを義元の
「貴様のような役人風情に、この
「我に1千の兵をお与えください。岡部の
「うっほん!なりませぬのじゃ。
文官と武官では、互いに馬鹿にしあってる部分があり、一度、論争に火がつけば止まらなくなるのは日常茶飯事であった。
信長は鞭を右手にもって振りかざし、強く机を打った。
「先生、いつも言ってるでしょう?喧嘩はいいけど、熱くなりすぎるなと」
両名は先ほどの熱が一気に冷め、冷や汗が湧いてでてくるのを感じずにはいられなかった
「もう少しで
一番熱くなってるのはその
信長は深呼吸を3度行い、気が鎮まるのを待った。ふっと短く息を吐き
「
と、
「
「
ははあっと
「
はっと
信長も本音を言えば、
「今川義元の
もやもやする気持ちを無理やり納めさせる信長であった。
しかし、この
「え…。俺、聞かされてないでござる…」
もうひとり、尾張内で居残ってた武将がいた。松平元康、のちの徳川家康である。
彼はもともと、三河国を治めていた、大名、松平家の本家筋であった。だが不幸が重なり、松平家は今川義元に従属することになり、大名家としては一度ほろびている。ただ、運がいいことに、才気を義元に認められ、幼いころより英才教育を受けることができ、さらには嫁まで与えてもらっていたのである。
しかし、所詮、従属国の若殿だけあって、主国の一大事においては捨て置かれたのである。
「ま、まずいでござる…。このままでは孤立無援で城を枕に討ち死にでござる…」
一方、織田家では
「えっと…。なんで松平は大高城に居残ってるわけなんでしょう…。先生、怒らないんで、心当たりのあるひと、挙手!」
敵勢が
「ん…。
「あーーー、先生たち、居ないときに何かやらかしたんでしょうか。ちょっと
ちょっと、信長さま、怒ってる。
「
「んー、困りましたね。松平なら勝手に三河に帰ると思い込んでて、まさかの居残りですからね」
単に今川に置いて行かれたとは、さすがの信長も露とも思っていなかったのである。
「もう一度、聞きます。先生、怒らないんで、心当たりのあるひと、挙手!」
大高城内は、いまやてんやわんやである
「忠次、半蔵。すぐに三河に帰る準備をするでござる!このまま、ここに居たら死んじゃうでござる!」
名を呼ばれた、
「
ここ大高城入城の際は、闇夜を利用しやってきたのだ。再び、同じことをするだけである。たしかに忠次の進言どおり、夜動けば、無事に逃げれる可能性はずっと高い。元康はいくらか落ち着きを取り戻し
「では、そのように事を運ぶでござる。皆の者、今はまだ、決して逃げ出してはいけないでござる。そして、外には中の慌てている様子を見せてはいけないでござる」
元康は、大高城の門を固く閉じさせ、夜に向け、静かに出立の準備をさせたのである。
織田家の
何事もないかのように日は、また昇り、朝となった。刻一刻とすぎ、ふと
してやられた!松平は夜のうちに撤退せしめ、大高城は、もぬけの殻であった。この報せはいち早く、信長の元に送られたが
「元康くんはおそろしいですね。あまり敵には回したくありません」
もし同数同士で、野戦にて10回戦えば、その半数も勝てるかどうか怪しい。信長が誇る精鋭をもってしてもだ。
さりとて、敵はすべて、
松平元康撤退後、早くも1週間が過ぎた。諸城を守る、主だった将を
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