第4話 メンバー集結!
六限が終わり、放課後になった。
公立である僕の高校ではいつも六限で授業が終わり、土曜日は学校が無い。
この事に関しても、学費に関しても、公立を選んでおいて正解だったなと思っている。
まあ進学率は悪い学校ではあるが、私立に行くには学費の面でも学校に行く日が多いという面でも、メンタル的に僕にはどうもきついところがある。
「さて、帰るか」
「よっ!結局大きい紙飛行機できたの?」
「全く、西条はこどもだな」
バッグを持ち席を立つと、後ろから阿形と高田が寄って来る。
「まあいい感じだな、なんだったら帰る途中飛ばしてやるぞ、僕のペーパーマン62号を」
「62…そんな作ってんのね…」
「まあそこまで本格的なら見たい気もしなくないな」
友人二人は呆れながら僕を見ていた。
僕のこの高貴な趣味は彼ら二人じゃわからないだろうな。
この一センチもずらす事無く、繊細に作られた紙飛行機を投げ飛ばすことを想像してみると、授業なんてくそくらえな程快感が満たされるのだ。
器用さだけならクラスでは誰にも負けるつもりがない。
才能は自画自賛するほどあるのだから将来はこういう職につければいいと思っている。
「おいおい、何勝手に帰ろうとしてんだ。お前昨日話した事忘れたんじゃないだろうな」
「誰かと思えばクラス一イケメンの山田さんじゃないっすか、俺達の隊長煽ってんすか?」
「おうおうおう、お前この前の件忘れてねえだろうな」
更にまたぞろぞろと山田が僕の元へとやってくる。
彼に対してはちょっとチンピラ交じりになっていた阿形と高田だったが、このイケメン山田とはめいたんが転校して以来少し悪い仲になりつつあった。
しかし、そんな彼らを物ともせず、ガンを飛ばす高田を鋭い目つきで彼は睨み返す。
某喧嘩ゲームならここで言葉を選択し、喧嘩へと発展するが…。
「おうおうおう、何睨み返してんだこら!」
「三対一で勝てる訳がないだろ!」
何故か三人の中では僕も混じってるようだ。
まあ僕はあの腐女子の件があって以来同じ目的を持った同盟を組んだ仲だ、ここは隊長自ら彼らを説得する必要があるだろう。
「悪いが西条と話があるんだ、今日だけは彼を貸してくれ」
「「なに!?」」
驚く彼らを見る限り明らかな語弊である。
貸してくれとかそういう語弊がある言い方はやめて欲しいものだ、まあこいつらが阿呆なだけであると思うが。
そして女子達の視線はいつの間にか僕達に集まっていた。
まあはっきり言えば山田の隣にいるおまけみたいなもんだが…。
僕達の間にホモ疑惑が浮上していないか不安である。
「お前達もしかして昨日から進展が…」
「それならまあ仕方がないな…隊長の初めてのお相手だ、認めてやるか」
阿形と高田は何故か納得したように首を縦に振っていた、こいつらの思考回路がどうなってるか是非とも見てみたい。
「まあ面倒だからこのペーパーマン62号を持って先帰っててくれ」
「これはでかい…こんなの作っててよく先生にばれなかったな」
「プロの作品だけあって飛ばしがいはありそうだ、俺飛ばしたくなってきたぞ!」
「よし!どこまで飛ぶか、やってやるか!」
「おっしゃ!公園まで走るぞ!」
こいつらときたら本当に単純というか、展開が進みやすいよう物を運んでくれるよな。
阿形と高田は本当に走りながら教室を出て行った。
「ったく、お前の友達は相変わらずの馬鹿だな」
「友達じゃない、部下だ」
友達と思われていても、それだけは譲らないつもりである。
僕は友達がいないという詐欺タイトルでいつか自伝を作るつもりだからだ。
「そんで四階の最奥だっけ、空き部屋と言われた部屋に集合だったよな」
「ああ、俺もよく知らんが顧問頼んで、その部屋を使わせてもらうんだろうな」
はっきり言って無謀な挑戦だろう、大人しく非公認同好会としてやってればいいものの、どうしてこう訳のわからない部活に部室を設けようとするのやら。ラノベならいけそうな展開だけど普通に考えて無理でしょ。
「まあ僕達は話に乗った振りをして断る姿を眺めようぜ」
「全く持って同意だな」
珍しく山田とは意見が合う、いやあの腐女子の事に関してなら全ての意見がこいつとは合うかもしれんな。
待ち合わせ場所に着き、待ち続ける事三分、僕達はもはや帰ろうとしていた。
これほど人生で無駄な時間があるだろうか。
そして遠くから二人の女子がこちらにへと近づいてくる。
遠くから見えたのは眼鏡をかけた、黒くて長い髪、同色の瞳の腐女子と黄金色の髪が目立った明石めいであった。
「いや~お待たせ、お待たせ、待たせたわね」
「いやいや、色々聞きたいことはあるんですけど何でめいたんがここに?」
「ははは、話して無かったわね、彼もこのおたく部のメンバーよ」
これはまた予想外の台詞…。
いやよく考えるとこれは幸運な事ではないだろうか、この腐女子はともかくこんな美少女がこの部活に入ってくれるのだ。
いやいかんいかん、一瞬だが入りたくなってしまった。
僕も山田もこの自己満足を満たそうとするだけの部活には反対なのだ。
それに先生もこんな部活認めるはずはないだろう。
目に見えているだけあって残酷だが、部活を作る話というのは無かったことになる瞬間を見届けようではないか。
「あの…よろしくです…」
「ああ、よろしく。めいたん」
思わずたんをつけてしまった…、しかし何のツッコミも返ってこず、ただめいたんは照れているだけである。可愛い…。
あのうるさい村星とかいうゴリラ女がいなければ、僕達の恋路を邪魔する者もいなくなる訳ね。
うむ、くそ…少し入りたくなってきたぞおたく部…。
「フフフ、仲いいのねあなた達」
「む…」
いかん、めいたんはあくまで男である。つまりはめいたんと仲良くすればこのリアルBLオタクの腐女子の餌になるということだ。
くそ…なんだかんだで邪魔が入るな。
僕とめいたん、二人だけの空間で誰にも干渉されずというのはやはり無理か。
「まあとりあえず時間も時間だし早速顧問の先生に頼みにいこうじゃないか」
「それもそうだな、きっと許可だしてくれるよ」
僕達は口裏を合わせてこの腐女子に先生に頼みに行くよう催促する。
まあ夢は早めに散らせる事が優しさでもあるのだ。
早く家帰って録画アニメみたいから素直に諦めてくれっていうのが本音であるが。
手っ取り早く終わらしてさっさと帰らせてくれ。
「ええ、そうね!じゃあ皆でいきましょうか」
「ここに呼ぶわけじゃないんだ…」
てっきりここに先生でも呼んでくると思ってたが、これは山田も恐らく同じ意見だっただろう、凄い困ったような顔をしている。
「あなた達に確認して欲しかったのよ、これから部室になる部屋をね」
「そ…そっすか」
「それじゃあ付いてきて、一人心当たりがある先生がいるのよ」
腐女子に言われるがままに僕たちは後ろから付いていく事にする、山田に関しては他の女子達にできるだけ気付かれないよう僕達との距離を五メートル間隔をあけながら歩いていた。それにしても一番気になるのはめいたんが何かのおたくであるということだ。
まあ十中八九趣味は女装なんだろうが、それは誰しもが知っている事実で、こんな意味不明な部活に入る動機がまだ一つとしてない。
うむ…この腐女子はなんといってめいたんを脅したのだろう、全くこの女に関しては訳がわからない。
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