2「勧誘は素早くスマートに」

「着いてきて」

 彼女の真剣な眼差しに、僕は彼女の唐突な発言を断る余地を見いだせなかった。怪訝な目つきで前髪越しに彼女を見ていると、左の手を引かれて驚く。

 彼女は人の溢れかえる交差点を突っ切って、僕の手を引きながらビルとビルの間をするすると通り抜ける。

「少し、複雑な道なの。でも、次からは一人でも来れるよ、心配なし!」

 そんな心配なんてしてない。そう思った直後、僕はその場所に通う義務が出来たような言い方をされたことに気付いて、戸惑う。ただでさえ戸惑いやすい僕は、思考回路がショート寸前になる。

「義務、っていうよりは、大翔はここに通うことになるの。行けばわかるから」

 細い裏路地をすいすいと行きながら彼女は淡々と話す。

 初めて話した時から、僕には彼女が謎過ぎて、なにが起きているのか全く読み取れない。と、そこに、落書きの痕の残る薄暗い壁に、ドアがあった。こんな目立たない場所にどうして目が行ったかというと、彼女が立ち止まってそこに視線を向けたから。

「ここだよ、早く入って!」

 そう言って瀬那はドアを押した。

 急かす勢いに呑まれて言われるがまま、僕が急いでその中に入ると、路地裏の暗さとは対照的な明るさが目を刺激した。

「なんだよ・・・ここ?」

 目が慣れてくるとそこの壁には、たくさんの種類の銃が飾るように並べられていた。すぐそばには発砲の練習をするためではないかと思われる空間と、真っ白な椅子とテーブルがあり、猫が一匹、椅子の上で退屈そうに身体を畝ねらせている。

「瀬那、どういうことだ?」

 さりげなく呼び捨てされていたし、と呼び捨てで呼んでみると、瀬那は自分の目を真っ直ぐと見て訴えた。

「私たちは、この世界を終わらせなきゃいけない・・・・・・大翔、私と、世界征服しよう」

 こいつは、本当に大規模なテロリストの回し者なのかもしれない。

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