クレーン
鉄筋を編むように作られた「クレーン」は瓦礫の大きな塊を吊るし上げ、軋む音を立てながらと向きを変えていく。汗をかき埃に塗れた男たちが瓦礫の下でクレーンから伸びる何本もの長いロープを引いていた。
手前の最も大きなクレーンの他に、やや小ぶりのクレーンが二台、合わせて三台のクレーンが休みなく働き続けていた。クレーンの間の道は何度も行き来する「ころ」で押し固められていた。吊り上げられるのを待つ瓦礫が順に並んでいる。そこまで瓦礫を押していた男たちは身体をひととき休めていた。
クレーンや男たちを一目で見渡せる背の高い建物の屋上に、赤い堀と炎が立っていた。
「なぜ、太めを殺した」
赤い堀が聞いた。
「誰が?」
炎が逆に聞いた。
「炎、オマエだ」
赤い堀は炎を見ていなかった。一心に働く赤い男たちをみつめていた。
「ボクはやってないよ」
炎は冷たく笑った。
「オマエだ」
赤い堀は繰り返した。
「だからボクじゃないって。まあ、いいけど。邪魔だから、さ」
炎は悪びれもせずに言った。
赤い堀は何も言わなかった。
クレーンから解き放たれた瓦礫が崖の向こうに消えた。瓦礫が崖に当たる騒音に続いて水音が微かに聞こえた。
じっと耳を傾けていた赤い堀の表情が変わった。
崖の際で下を見下ろしていた赤い男たちが後ろの男たちを手招きしていた。
「降りる」
赤い堀が言った。
「どういうこと」
炎は戸惑いを隠さなかった。
「ついに、だ」
赤い堀の声は確信に満ちていた。
崖の際に続々と男たちが集まっていく。
「どういうこと?」
「オレはあの堀を埋めたいだけだ。そして、それは間もなく達成される」
歓声を上げだした男たちの群れをめざして赤い堀は駆け出した。
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