怠け者
急いでいる時に限って余計なものが目に入ってしまう。気にしないようにと思った時はもう気になっている。
少年は急ぐのを諦め、目に入ってしまった何かをもっとよく見るために廃棄口の前に近づいた。
居住区のゴミは廃棄口に捨てられる。
男たちは基本的に怠け者だ。わざわざゴミを捨てるのも面倒くさがる。だから、廃棄口の周辺にはゴミが散乱している。散乱したゴミはそのうち誰かが排気口に投げ込む。居住区の男たちは臆病者たちがゴミを片付けていると信じている。事実かどうかはわからない。
少年の目に留まったものは、やはり本だった。機器の説明書の類だ。既にあちこちの部屋で似たようなのを見つけていた。説明されいる機器が何なのかはよく分からない。機器の説明をする本があっても本が説明している機器はどこにも無い。おじさんは知っているかもしれないが、少年はミたことがない。
本が捨ててあるとどうしても手に取りたくなる。文字が書いてあるとどうしても読みたくなってしまう。
気がつくと手に取った本をぶつぶつ言いながらほとんど全部読み尽くしていた。
宮殿の光が変化している。時を告げる鐘の音も聞こえてきた。
少年は少し迷ってからその本を鞄に放り込んだ。
いつもよりだいぶ遅くなっている気がした。帰りに学校に寄ってこの本を置いていく時間はあるだろうか。
急がないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます