あとがき
いつかは来るだろうと思っていた時がついに来ました。
フリッカーズの解散。
かれこれ十年。真横にいたり、かなり遠くにいたり。
関わり方や役割や距離感は色々変わっていったけれど、彼らと過ごした時間はアホみたいに濃い時間でした。
小便ちびるかと思うぐらい感動したライブに、客席で思わずガッツポーズした夜もありました。
ただただ騒いで、何が面白かったかはいっさい思い出せないけど、ひたすら笑った夜。
あまりの怒りで携帯がぶっ壊れたり、悲しみに打ちひしがれて月を見上げた夜も。
数えきれないほどの人と知り合い、数えきれないぐらいのジョッキを空けてきました。
特に最初の三年ぐらいは、僕にとっては特別な時間でした。
僕らはまだ若くて馬鹿で怖いものしらずで、何のしがらみもなく失うものは何もありませんでした。
今になって思えば、その時間が『青春』だったのかもしれません。
正直、「もう一回やれ」と言われたら、寝れないし辛すぎるから絶対イヤですけどね。
ロックバンドも含めて、ポピュラーミュージックというのは残酷です。
才能があるだけでは、音楽で食べていくことすらできません。
才能と努力とタイミングと、あと二つぐらい幸運が重なると、ようやく食べていける所まで行けます。
そこからさらに、時代に墓標を突き立てるぐらいの名曲を世に送り出すことができるのは、数多いるミュージシャンの中でもひとつまみの『選ばれた人』だけです。
音楽を一生続ける事ができますが、ポピュラーミュージックの歴史の一部になることへの挑戦は、ほとんどの場合、一生に一度しかできません。
ほとんどのバンドが、百人ぐらいしか聴いてもらえない所で力尽き、無名のままで終わります。
かくいう、僕もその一人です。
フリッカーズはそんな中、十年間も挑戦し続ける事ができました。それだけでも、よく頑張ったと思います。
あなたにとって、フリッカーズとは何でしたか?
なんだかわからないけど、心がザワザワするバンドでしたか?
意味がわからないぐらい最低なライブをするけれど、たまにあり得ないぐらい最高なライブをするバンドでしたか?
フリッカーズは、あなたの人生にとって大切な曲を届けましたか?
もしそうであるならば、十年前のライブハウスで、フリッカーズに声をかけて良かったと思います。
Flicker 近藤 セイジ @seiji-kondo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます