第9話

「少ない」

 この間から思っていたことだった。

 不思議研究サークルに体験入部に参加したその日から、魔は急激に減っていた。おまけに魔の大きさも小さい。

「確かに急に減りましたね」

 街灯の下で魔絵巻に収まった魔を確認した。ケンも横から覗きこむが、やはり、日に日に魔の大きさは小さくなっている。

「美月様が体験入部してからですよね」

「そうだな」

 魔絵巻をしまい、山の方へ向かった。最近は、魔が住宅街に多かったから、先に住宅街を回ってから山へ行く、というコースが定着していた。

「やっぱり、川上君が怪しいですね」

「でもさ、何で、私が体験入部したからって魔が減るんだ?」

「それは、わたくしにもわかりません。でも、美月様が何か関係しているのでしょうね」

 山へ一歩足を踏み入れると途端に視界が暗くなる。視界の先を埋めるように木々は、少しずつ、重ならないように生い茂っていた。そのせいで、ちっとも先が見えやしない。木の間を抜けても、すぐ目の前に木があらわれる、それくらいこの山は木々で覆われていた。

 もう、体験入部に参加するつもりはない。

「明日から何もなければいいけどな」

 木々の間をくぐって呟いた。

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