第4話
ロンドンに着いて、僕らはアパートを探した。彼は壊滅的に英語を話せないけれど僕は話せる。いちいち首を傾げる彼にいちいち説明して、やたらと疲れたのを覚えている。
それを不憫に思ったらしい通行人が、日本人の大家がいるアパートを紹介してくれた。
それなりに値段のするいい部屋だったが、彼の父親が医者らしく、仕送りのおかげで家賃は半分に出来たので良かった。
今日のところはホテルに泊まることにして、安ホテルに荷物を運び入れた。
「ご飯どうします?ごはん出ませんもんね。キッチンないし」
「うん…てかお前料理できるの?」
「ふっふー、得意なんですよぉ!いつか朝食とか作ってあげますね」
鼻歌でも歌いそうにはしゃぐ体格のいい男。
僕の方が背は高いが、彼はかなり筋肉質でひき締まった体をしている。
「買ってきてあげるから此処で待ってて」
「はい!俺ね、お肉が食べたいです!」
「はいはい肉系ね」
やっぱ肉を食べないとああはならないのか、などと考えながら街を見渡す。
ロンドンの街はごちゃごちゃしたところが東京に似ている。空が狭いのだ。
通りに広く構えたカフェで薄く切った肉のたくさん挟まったサンドイッチを二つ買う。こんな肉よりステーキとかの方がいいのかなぁとも思ったが食器もないし、と思い直す。
にこにこした女の店員さんがコーヒーをすすめてくれたので買い、飲みながら帰る。アメリカンよりは濃いが薄めで、あんまり美味しいコーヒーではなかったので少し落ち込んだ。マニアではないが、コーヒーの美味しさはその日の気分を決めると思う。
よく考えるとあの彼と一緒に住むことになってしまった。飛行機の中だけでも疲れたのに僕は彼のあの人懐こさに耐えられるのだろうか。明るく年相応に子供っぽい彼と、暗い成人過ぎの男が仲良く出来るとは到底思えなくて、ため息をついた。
鳥のような男 allow @allow
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