刑事、神崎。
一昨日、1人の男が死んだ。
よくある交通事故、偶々視界が悪い四つ角で。
いたって平凡。
男は中小企業に勤める36才。独身、未婚。
勤め先近くのアパート在住。その日も出勤途中であったようだ。
いたって平凡。何も不思議はない。
ただ一つ違う所を述べるならこれ。
『遺書』の存在。
それも日付と場所と、おおよその時間さえも書かれてあるご丁寧な遺書。
どうしてこんなものがある?
この男は自殺だったのか?
、、いやその可能性は薄い。運転手は本当に何も知らないようだった。
なにより、男と面識はなかった。
一体どこの世界のやつが顔も知らない男の自殺を補助するだろうか。
ただの不幸な事故だったのか?それとも、、
「「神崎さん!!」」
「うぉっ!?」
唐突な大声に、つい頓狂な声が出てしまった。
「神崎さん、何回呼んでも返事しないから。お昼、どうします?」
「忍足、叫ぶ前に肩でもなんでも叩いて呼べっていっただろ、、」
彼女は
「だってそれだと逆セクハラとか言われそうですし。というか叩きましたよ、肩。」
「...悪かった。」
俺は考え事に没頭すると周りが一切聞こえなくなるタチらしい。叩かれても気づかないとは。
「ところで、それ例の事件ですか?」
「、、結局事件なのかこれ?」
「そりゃあ中々頭を悩ませてるらしいですよ。上の方たちは。なんたって『予言死』だって巷では持ちきりですからね〜」
「『予言死』ってなんだ?」
不意に後輩から発せられた言葉に、疑問はそのまま声に出た。
「え、先輩知らないんですか!?はぁ…それでも刑事ですか?もぅ。これですよ〜」
「悪かったな。」
どうしてため息までつかれなければならないのか、と思いつつ後輩の開いた本のページを見た。
『また予言死か!?これで15件目!神はいつでも私たちを見ている!』
、、なんだこれ。日刊神記伝?何かの宗教雑誌か?
「嘘くせぇ、、、」
つい口に出た。
「それは同感です。でもこの雑誌によるとですね、、」
「そんな雑誌に書いてあることなんざ信じるわけねぇだろ。聞く耳もねぇ。」
「(´・ω・`)」
「、、そんな顔するなよ。言ってみろ。」
子犬かなにか小動物を苛めているような感覚になり、つい許してしまう。
「はい!」
ぱっと彼女の表情が明るくなる。単純な女だ。
「ええとですね、、この雑誌によりますと、夢に神様が現れて自分の未来を示してくれるそうです。」
「所謂予知夢ではないのか?」
「多分それの上位互換的なのだと思います。それでですね、、もし本心が生ではなく死を望んでいるならば、自分の死を神が教えてくれるって書いてますね。」
「だからどうしたって感じだな。」
「その夢が所謂『予言』された状態なんですけど、その内容で死ぬ以外、その人は何をしても死なないそうです。」
「銃で撃たれてもか?」
「日常において銃で死ぬ状況あります?」
「ねぇな。」
「、、じゃあこの事件も『予言死』だったってのか?」
「今日の被害者さん、SNSでは中々有名な方だったみたいで。予言が来たから今日の11時に死ぬ、って一昨日そんな内容の動画を配信してたそうですよ。」
「ただの偶然じゃないのか?」
「それだと説明が乱暴すぎじゃないですか?」
「じゃあその『予言死』だって言うのか?
それでも刑事なんですかぁ?」
「先輩って根に持つタイプなんですね。
私もそうとは思ってませんよ。ただ、、」
「わかったから仕事に戻れ。聞いておいてなんだが話が過ぎる」
「(´・ω・`)はぁい。」
またあのしょぼくれた顔をしたまま、忍足は自分のデスクに帰った。そして何故か、また俺の方に近寄って来た。
「(´・ω・`)お昼、、」
時計を見ると13時を回っていた。
「ラーメン行くか。」
「はい!」
また彼女の顔が緩む。本当、単純な女だ。
予言死 water @watercandy
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