第44話 また一人の運命は変わる

焼け焦げた地形の変わった河川敷に周囲の人は何事かと集まっていた。

まさに魔王の極大魔法クラスの大爆発により現地は悲惨な現場と化していた。

焼け焦げた肉片が吹き飛ばされておりその場で数人が犠牲になったと言うのが一目で分かった。

だが誰一人として近付こうとはしない、爆発の原因も分からず爆発があれ一度などと思ってないからだ。


その爆発の跡地に動くものがあった。

フーカであった。

彼女だけは無事だったのだ。

それにはいくつもの偶然が重なっていた。

まず目の前に居たマコトが胸元に入れていたドラゴンユニコーンの角。

それが最初の壁になりマコトの体は消滅する事なく腹部だけは残った死体となって吹き飛んだ。

次に何かの際にと考えていたメールの結界が爆発の威力を遮った。

それでもコンマ何秒しか耐えれなかったが僅かばかりの障壁にはなった。

そして、ジルとゴンザレス太郎が肉壁となり3人の体は大火傷を負って瀕死となって転がった。


これらの壁が偶然にも直線上に並んでいた為フーカだけは吹き飛ばされただけで助かったのだ。

フーカはゴンザレス太郎の焼けた体を視界に入れ空気が焼けているために呼吸すらままならない場所で状況を確認する。

辺りに散らばる悲惨な状況を見て、かつて自分が経験した死に方の一つと同じ状況なのにトラウマが甦る。

だが今回の彼女は生きていてその手元にはそれが在った。


「やっぱりゴンザレス太郎こそが私を助けられる王子様ね…」


そう呟きフーカはラストエリクサーの蓋を開ける。

それがラストエリクサーの使用方法であった。

空気に一瞬で溶けたラストエリクサーは一気に周囲に居る全ての人の元に届いた。

その効果は…


病気怪我は一瞬で治し欠損部位は勿論瞬間的に復元する、更に死者すらも死んでから10分以内なら完全な状態で生き返らせ、効果を受けた者の身体能力は数倍に跳ね上がる。

その効果は近ければ近いほど強く、離れて見ていた人達にも超協力な回復薬として機能した。

そして、その人達から見えていたのは一人の少女であった。


爆発に巻き込まれたサリアは何が起こったのか分からなかった。

ただ空腹で意識が朦朧としていたら何かに吹き飛ばされた。

爆発の中心から離れていた彼女は殆んど怪我する事なく無事だったのでそのまま手に持ってたぬいぐるみを抱いて立ち上がった。

するとその体に空気に溶けたラストエリクサーの効果が届いた。

全身が輝き体の傷は癒え生まれた時に無くした片腕は復元した。

そして、身体能力は少し離れていた為倍くらいになり彼女は何が起こったのか分からず立ち尽くしていた。


その姿は人々から神々しく見られた。

後光、いや全身が輝いていたので挙身光だろう。

そして人々はその光を見て驚いていた。

片腕が無かった少女は全身を輝かせその腕が復元する様子を見せつけたのだ。

更にその輝きを見た人々は体の怪我や病気が治った。

全てはフーカがふたを開けたラストエリクサーの効果であったのだがそんな物が実在することすら知らない一般の人々にはそれが少女の起こした奇跡にしか見えなかった。


その瞬間少女は神の化身として崇め奉られる存在となった。

それはサリアにとって降って湧いた幸運であった。

人から無視されて家族に不幸をばら蒔か無いように家から出て少女にとって、不幸のドン底から再び幸運が流れ込み限界を超えてスキルが再び発動し少女を崇めていた人々に幸運がばら蒔かれる幸運の連鎖がこの瞬間始まったのであった。

少女はその時に偶然にもそこに居た子供の居ない老夫婦に引き取られ、それからの日々を幸せに暮らし貰った幸運を人々に還元し続ける幸運の女神として数年後少女の意思と関係なく本人の居ない場所で新しい宗教が生まれるのだがそれはまた別の話であった。




「う…ん…ここは?一体何が…」

「起きた?」


マコトが目を覚ますとそこにはメールが居た。

二人はラストエリクサーの効果で一度死んだ状態から生き返っていた。


「う…ん…一体何が?」

「あのね…」


メールから話される事故の話とラストエリクサーによって生き返った話、そして…


「そういう訳で爆発で粉々になった『ドラゴンユニコーンの角の欠片』を持って今ジルがギルドに行ってるわ。」


※ドラゴンユニコーンの角の欠片:錬金術の素材として使用でき価値は金貨20枚ほどでサイズによって価値は変動する


「はははっ全くなんて幸運だ」


マコトの呟きも仕方無いだろう。

結果的に依頼の品はゲット出来て彼等はBランクとなる。

更にキメイラの翼と言う貴重なアイテムをゲットできラストエリクサーの効果で実力は数倍に跳ね上がり彼等の強さは既にAランクに届いていた。

これも全てゴンザレス太郎に出会わなければ起こらなかった事である。


「っであれはなにをやってるんだ?また新しい効果を試しているのか?」


マコトが視線を向けた先にはゴンザレス太郎にまるで駅弁スタイルで抱き付いているフーカの姿だった。


「なんかね、離れたくないんだってさ」


ゴンザレス太郎に抱き付きまるでフーカアーマーと化したフーカの背中を優しく手で叩き、子供をあやすようにしているゴンザレス太郎は自分の埋めたアイテムを掘り起こしてない事を皆に伝えるか悩んでいたのだが、次同じ様なことが起これば助からないと考えてこのコードは封印し埋めたものは忘れることにしたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る