第43話 運命の歯車は連鎖し続ける

ぬいぐるみを抱えて歩いている少女が居た。

名前はサリア、生まれた時に母親の中から出る際に逆子で片腕が引っ掛かりそのまま片腕を生まれると同時に失った少女であった。

彼女の人生はとにかく絶望に包まれていた。

片腕ながら大切に育てられたのだが5歳の時に妹が生まれて全てが変わった。

両親が彼女を無視して妹ばかりを可愛がるようになったのである。


そして、彼女は両親から無視される日々を過ごした。

それが彼女のスキルに関与する事だと誰も気付かずその日は来た。

彼女が6歳になり本来なら礼拝堂でユニークスキルを授かるのだが彼女は礼拝堂には連れていって貰えなかった。

それが最大の失敗だった。


実は彼女は生まれた時に母親に礼拝堂に連れていかれ片腕でも幸せに生きられるようにと祈られていた。

その時に本来ならあり得ないことなのだが彼女はユニークスキルを得ていたのだ。

そのスキルの名前は『セーブラック』運を蓄積し限界を越えると周りにばら蒔くスキルであった。


切っ掛けはほんの些細な出来事であった。

母親が彼女に食事を与えなかったのだ。

だが彼女も無視されているのを分かっていたので敢えて何も言わず空腹に耐えた。

これがスキル『セーブラック』の悪い運を蓄積できる限界を超えたのだ。


その夜、悪い運を本人の意思と関係なく初めてばら蒔いた事で彼女は自信のユニークスキルの招待を知った。

それは彼女にしか見えない色の付いた運が人に向かって流れる光景だった。

悪い黒い運は彼女の家族にばら蒔かれ彼女の中の運をプラスマイナス零にした。


そして、その夜火事が起こった。

幸い死人は出なかったが父親は両足を、母親は顔を、妹は両腕を大火傷し後遺症と火傷の後が残ることになったのだが少女だけは無傷であった。


そして、その無傷のサリアがその火事を起こしたと家族は疑った。

よく考えれば出火原因も台所の火の始末がちゃんと出来てなかった事でサリアは台所どころか夕食すら食べさせて貰えなかったので近付きすらしてなかったのにも関わらず。

そして、サリアは一度発動した事で自らの中に悪い運が蓄積されるのを理解していた。

このまま家族の元に居ると再びこんな悲劇が起こり家族を不幸にする。

そう考えた彼女は着の身着のまま片腕で持てるだけの食料を持って家を飛び出した。


そして、数日後持ち出した食料も既に残っておらず何とかして食べれるものを得ようと町を徘徊して裏路地で犬の魔物のぬいぐるみを拾った。


そのぬいぐるみを抱いた時に彼女は気付かなかった。

マイナス方向に運が貯まるのは一度限界を越えてばら蒔いた事で分かるようになっていたのだがプラス方向には一度も限界を超えてないので増加に気付かなかったのだ。


そのままサリアは河川敷を歩きここ数日寝床にしている橋の下を目指す。

空腹で視界が揺らぎ意識が朦朧としていたのでサリアは気付かなかった。

そこでゴンザレス太郎達が実験を行っているのを…

そして、人が居る場所に到達したことでサリアのスキルが発動する。

幸運はその場に居る全員にばら蒔かれマコトが掘り出したアイテムは凄く良い物となった。

だがスキルによって配られた運はラストエリクサーを掘り起こしたことで使い切られていた。


そして、マコトはクイーンボムの堪忍袋の緒を掘り出す際に切ってしまい大爆発を引き起こした。

その爆風はゴンザレス太郎達を視界に入れられる場所まで近付いていたサリアにまで届きサリアは吹き飛ばされ意識を失うのであった。

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