第20話 雪どけ水の夢

風の強い夜だった。

友達と映画を見たあと

広場に寄ってたくさんの

提灯が揺れるのを見た

家に帰るとひどく疲れて

泥のように眠ってしまった。



夢を見たんだ。



五月の野原を雪どけ水が

さらさらと小川へ流れて

まだらに開いた雪の間に

芽吹いた緑が萌えている。


冬には見渡す限り白い大地に

電信柱の黒い影だけ心細く

立っているのを思ってみれば

すくった水の冷たさに

驚かされるのもまた嬉しい。

川底は砂金でもまいたみたいに

きらきらしている。



そんな野原を君と歩いた。



僕がああだこうだと勝手に言うのを

君は笑って聞いている。

橋の手摺りに座ってみたり

小洒落た家の鉄柵の

上に残った雪などを

いたずらっぽく撫でて

はらってみるたびに

君は何か物言いそうに僕を見るけど

それでも静かに笑っているんだ。

五月の水は冷たく自由で

歓喜にあふれている。



ふと目を覚ますと夜中だった。



少し寝汗をかいて寝苦しいので

なんとなく表へ出てみると

相変わらず風が強く吹いている

雲が空をくくっちまって

月明かりは届いてこないが

光がかすかに漏れているのを見れば

どこにあるかはよくわかる。



五月の水よ



夢の中での冷たさを

この手はもう覚えていない



五月の水よ



せめて今だけ許してほしい

あなたを偲んで痛む心を

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