第19話 楽園4

外だ。


しかし、そこは凍てつく闇も、吹雪もない不思議な世界だった。

オレンジ色の岩場の向こうに白い空と

エメラルドグリーンの海が広がっている。


海風が吹いていたが、別に寒くも暖かくもなかった。

そして曇り空の上から溢れる柔らかい光は

まるで何かの呼び声のようにも感じた。


僕達は、目の前を流れる広い川に沿って、海へ向かって歩き出した。


すると急に遠くの方から地鳴りのような音が聞こえてきて

僕たちはとっさに岩陰に身を潜めた。


ズーン・・・ズーン・・・


その音は振動と共により一層明瞭さを増していき

どうやら海とは反対の方向・・・

広い川を挟んでそびえ立つ

険しい山々の間から響いてくるようだった。


僕達はその音のする方をじっと見つめていた。


やがて、濃い霧の向こうから

とてつもなく大きな二つの影が現れた。


それは

青い肌を持った

とても巨大な男の子と女の子だった。

彼らは僕達に気付くこと無く、悠々と波を立てながら

川の上を海の方へと歩いて行った。


彼らの目指す先に目をやると

海に無数の海賊船が浮かんでいて

その上には小さな海賊がたくさん乗っていた。


やがて彼らと巨人の合戦が始まり

大砲の音と一緒に悲鳴や歓声も響いてきたが

海賊たちが、巨人につまみ上げられたり

放り投げられたりしても一様に

楽しそうにしているのを見て

あれは遊んでいるのだとわかった僕たちは

海へ向かって走りだした。


小さな海賊たちは皆子供だった。

大きな青い兄妹も、実は普通の子どもだった。

僕たちはそれからその子供たちと仲良くなって

毎日一緒に遊んだ。


ある日、彼らと草むらの上に寝っ転がって

ずっと晴れることのない、明るい曇り空が流れるのを眺めながら

僕は何気なくつぶやいた。


「ここは中間霊界みたいなとこだね」


すると一緒にいた子が「僕は病院で意識不明なんだ」と言った。

更にもう一人が「僕は車にはねられたみたい」と言った。

「ふーん、そうか」僕は気の抜けた相槌を打ちながら

「じゃあ僕達も・・・?」と考えていた。


それから、誰からともなく何人かが大きな鳥に変身して

彼らに乗って遊ぶことになった。


彼らにしがみつきながらしばらく遊んでいると

突然、僕達が出てきたトンネルの穴から

いつかの怪物がたくさん出てきて

鳥に化けていた仲間の一人に襲いかかった。


僕達は驚いたが、次の瞬間

皆、一斉に奴ら目がけて急降下していた。


僕達は一本の巨大な真っ黒い矢のようになって

群がる怪物目がけて飛んでいった。

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