第18話 楽園3

振り返るとさっきの奴が階段をゆっくりと這い上がってくる。

僕たちはその長い廊下を右へ左へと道なりに走り続けた。

しばらく行くと、突き当たりに再びドアが現れた。

僕たちは急いでそこから中に入ると開け放したドアの影に身を隠した。


すると、向かいの通路の曲がり角から女性が現れて

「あなた達何してるの、ここは危ないのよ」と言いながら

こっちへ近づこうとしたその時、突然、鋭い爪のはえた

大きな黒い手がドアを掴んだ。


次の瞬間、女の人が悲鳴を上げ、一目散に逃げ出したかと思うと

ドアの向こうからあの大きな大きな黒いトカゲのような

いやらしい目をした怪物がぬっと顔を出して

そのまま彼女を追いかけて行ってしまった。


しばらくして僕と姉は女の人と怪物が曲がって行った角まで忍び寄ると

そこから恐る恐る向こう側を覗き込んだ。


そして僕たちはとても奇妙で恐ろしい光景を目の当たりにした。


その通路には四方をガラスで囲まれた部屋があり、その中には

たくさんの人が所狭しとひしめいていたが、皆一様に青白く

生気のない顔をしていた。そしてその奥にはあの怪物が見える。


やがて、彼らは先程の女性を担ぎ上げると

口を大きく開いて待ち構えている怪物の方へと運んでいった。

女性は必死に叫んで抵抗しているが

誰一人として意に介す様子はない。


見るに耐えない悲惨な光景に思わず目をそらすと

その部屋の向こう側に下り階段が見えた。

ガラスの下は1メートルほどの高さの壁になっているので

僕たちは身を低くしながら、彼らが夢中になっている隙に

すばやく反対側へ回ってその階段を降りた。


長い階段を一番下まで降りると

薄暗い廊下に人が沢山いて、不意に現れた僕らに驚き

一瞬ざわついたが、彼らは先程の人達と違ってまともなようだった。

子供もたくさんいた。


僕達がさっき見たことを伝えると、みんなは一斉に慌てて

廊下の両側にたくさん並んでいる扉の中へと逃げ込みはじめた。

僕達もどさくさに紛れて一番奥の突き当たりの部屋に入った。


ろうそくの薄灯りをみつめながら

皆じっと息をひそめ、誰も何も言わなかった。

どこかで赤ん坊のなく声だけがかすかに響いていた。

僕達はうずくまる彼らの間を縫って奥へと歩いて行った。

すると人と人の間に小さな入口の照明が見えて

さらに下へと続く狭い階段が現れた。


僕達は迷うことなくその階段を降りていった。

下につくと、干からびた下水道のようなところに出た。

壁についた照明が朽ちた天井を照らしている。


その長い道は一本、暗闇へとずっと続いている。

僕と姉は再び走りだすと、奥を目指してひたすら駆け抜けた。

先へ進むに連れ段々と道は狭く暗くなっていったが

やがて遠くに小さな明かりが見え、トンネルを抜けると

眩しい光りに包まれ、一瞬、目の前が真っ白になった。

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