第15話 扉

酷い頭痛がする。もういつからこの暗い屋敷で召使を

やっているのかてんで思い出せない。松明の灯りを頼りに

階段を下りて地下にある仲間との相部屋に戻ると、奴は

男娼を招いて事の真っ最中だった。俺はお構いなしに

自分の寝台の上に腰掛けると、一方的にまた何か

しみったれた事を話しかけていたが――――悪気はない。

ただ「お前と会ってずいぶんと経つが・・・」などと

言うような事を、二人の男の尻に向かってのそのそと

喋りかけていた――――やがて奴の毒虫が力なく

へたれるのを見た。「ちぇっ、今日はこれまでだ」

奴はそう言って男娼のナニに噛み付くと次にそれを

ぴしゃりと叩いた。それから男娼は黙って出て行った。

「火は消しといてくれよ」奴は瓶に残ったウィスキーを

一口にやっつけると、さっさと布団にもぐりこんでしまった。

俺は腰掛けたままさっき男娼が出て行った

ドアの辺りをじっと見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る