第12話 学園都市

そこはまるで、街のように大きな学園だった。

居住区も商店街も全部学校の中にある。

俺は弟と一緒にある物を盗み出して教師たちに追われていた。

それはなにやら「それを持っていると特別な者になれる」らしい

仮面ライダーフィギュアの様な人形だった。

家に向かう途中、待ち伏せしていた教師に

見つかりそうになったが、職員室に身を潜めながら

何故か椅子の背もたれを片っ端から外していくという

悪質な作業に手間を惜しまなかった。

 

家に帰って配電盤の上にフィギュアを隠した。

家の中は壁も家具も何から何まで錆びついた鉄で

できていて、さみしくぶら下がっている裸電球が

薄汚い茶色い部屋を照らしている。

天井の隙間から水が漏れるのか壁は濡れている。

その部屋の中で母親がスカイプで誰かと会話していた。


そのあと俺は学園の集会に向かった。集会の会場は

青天井のスタジアムみたいになっていて、真中に

円形の水槽があってその中をシャチが泳いでいる。

その奥にステージがあって、ちょうど水族館の

イルカショーの会場の様な作りになっているが

椅子は水槽の方ではなくステージの方に向いている。

ステージの上でMCの男女が漫才の様な掛け合いをしているところだった。

席にはまばらに人が座り始めていて、友人を見つけたから

隣りに座ったんだけど、彼と会話をしていると彼の反対側に座ってた

女の子が露骨にいやな顔をしてくるので、俺は場所を移して

比較的空いているステージに近い方の席に座った。


二階席からSFPと書かれた青いTシャツを着た人たちが

ステージを覗き込んでいる。MCの一人が「お前のファンが集まってきてるぜ」

と言うともう一人が二階席を見上げながら「おいおい冗談だろ」と言った。

何がおかしいのか俺にはわからなかったが会場は爆笑だった。

しばらくして、不意に誰かに頬を指でつつかれたので

振り返るとどこかで見たことがあるような女性が立っていた。

彼女は俺の後ろに座りながら「元気?」と言った。

「ああ」俺はその人を知っている様だったが

どこで会ったか思い出せない。少しだけ日焼けした肌に

笑うと前歯がのぞく可愛らしい人だ。誰だろう。

・・・水原希子だったかもしれない。

それとも近所のファミレスのウェイトレスの子か。

ああ、たぶんそうだわ。

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