第5話 黒い子供達

気がつくと僕は雑木林のようなところを彷徨っていた。木々の間から黄昏時の明かりがさしこんでいる。

遠くで波の音がする。ふと大きな黒い蝶が目の前を横切った。僕は誘われるようにそっちのほうに進んで行った。



林を抜けると、赤い煉瓦の防波堤が崖に沿って続いていた。覗き込むとはるか下に高い波が打ち付けている。

その防波堤が登って行く先に、お城のような屋敷が建っているのが見えた。



波の音に混じって子供の笑い声が聞こえてきた。屋敷に向かって歩くと不意に開けた場所に出て、その広場で小さな子供達が遊んでいた。

男の子と女の子が追いかけっこをしていて、草の上や防波堤の上を走り回っている。もう一人、その少し離れた砂場で遊んでいる少女がいた。

3人とも綺麗な白金色の髪をしていて真っ黒いよそ行きの服を着ている。そして背中には黒い翼が生えていた。



僕は砂場で遊んでいる子の側へ行って訪ねた。「何をしているの?」

彼女は物憂げな表情で僕を見上げると「パパを待っているの」とだけ言った。

僕はその深く青い瞳から目をそらすことが出来なかった。

その奥に彼らのおぞましい秘密を見た気がしたのだ。

夕暮れの空に黒い蝶が飛び回っていた。

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