第4話 紅天雀

べにてんじゃくっていう多分名前のとうりスズメガの一種なんだろうけどふさふさで真っ白な体に大きな目。サイズはとても小さくて多分1cmあるかないか。


いつかお土産屋で買った水晶の原石に穴がたくさん開いてたので何かと思いテーブルの上でガンガンやってたらそのうち汚い液体が穴から出てきた。


何が入ってるのか確認するため金槌で石を砕いてみる。すると石の割れた面には溝がいくつかあって例の穴が何かが掘り進んだ後だというのが分かる。そしてその溝の先に不自然な凹凸が確認できた。


石の表面に楕円形の水ぶくれのようなボツボツがいくつもついている


その表面をなでてみると、その小さなふくらみだけは以外に柔らかいことがわかった。


しばらくその凹凸を眺めながら切開しようかどうか悩んでいるといきなりふくらみに亀裂が入り、中から大きくて真っ赤な瞳が二つのぞいてきた


その時になってようやくそれが繭だということを確信する。繭は次々と開いていき、その赤い目の何かが体を伸ばして這い出そうとしてきた。


僕は怖くなってそれらを一気にゴミ袋につめてしまった。


後で調べてみるとそれはとても珍しい蛾でマニアの間ではとても貴重らしい。普通の紅天雀を(何故か)Rと呼び、その中でも特別なものをLと呼んで長年探し続けている人もいるらしいが、Lなど存在しないと言うのが一般的な見解である。


彼らの生態は謎に包まれていて成虫も滅多にお目にかかれないが幼虫にいたっては今だ目撃されたことがない。どこからかやってきて石の中に繭を張りいつの間にか出て行く・・・僕は大変惜しいことをしてしまったと思った。


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