◇St.three:女子会!?
*“それからは平和に楽しく、ガトーショコラを三人で完成させることが出来ました。めでたしめでたし”
そう脳内の日記へ記述し、今日一日を締め括りたかった
「ぎゃー! 仁子っ! さっくり切るって何!? さっくり切れないぞこれ! 全然さっくりしてこねぇぞこれ!」
「ちょっと
「へっ!? 切る!? 混ぜる!? どっちだよ! ざけんな!」
「切るように混ぜるのよっ!」
調理を開始し発覚した
「如月さん……わざと…っ……暴れてるでしょ」
全力で百メートルを駆け抜けたかの如く息を上げる仁子に、ヤケになっている梨紗は噛みついた。
「はぁ!? どっからどう見てもガチだろ!? っつか、料理、ま、全く出来ねぇわけじゃねぇぞ!」
「た、例えばっ……? 何作れるの?」
「卵割ってかけるとか」
「んがっ?」
仁子は衝撃に豚の鳴き声のような短い声を漏らしてしまった。
「すごーい」
「
大人しく椅子に座り、氷水につけたボウルの中の生クリームをシャカシャカと手元の泡立て器を操りホイップし続けている
「えっ? わたし、心の底から褒めてるよ? だって梨紗ちゃん高校の時、卵割れなかったんだよ?」
「あなた何を言ってるの? 卵が割れない? そんなわけないじゃない。割れるわよ、卵は。わずかな力でパリッて簡単に!」
次の瞬間。
バリィッ!
「……って感じ?」
“パリッ”を百回かけて倍増させたような耳を疑う効果音に硬直した仁子へ、杏鈴が切なげな笑みを浮かべて小首を傾げた。
「あああああぁっ! 殻入ったぁ! いや~、ひっさしぶりだからなまじで。まだイマイチ調子戻ってこねぇや、いっけね☆」
“てへぺろ☆”的なノリの表情で
「でも、梨紗ちゃんよかったね。ちゃんと割れて」
「ちょっと待って……ちゃんと?」
のほほんとした声色で梨紗を褒めている不気味な杏鈴の二の腕を何とか現実へと帰還した仁子は思わず掴んでいた。
「うん。高校の調理実習の時、梨紗ちゃん割った卵ボウルに入れられなくて、床、結構黄色くしてたから。梨紗ちゃんの班、梨紗ちゃんのせいで卵足りなくなってオムライス作れなくなっちゃって。わたしの班からお裾分けしたんだよねーその時、懐かしいなぁ……」
仁子は杏鈴の言葉を受け、視線を梨紗へと戻す。ひとりで様々な食材並びに調理器具と格闘する懸命なその姿を目尻に皺を寄せて見つめたまま、仁子は温厚すぎる杏鈴へ尊敬の意を抱いたのであった。
「前言撤回。謝るわ、笹原さん。卵って割るの、ぜんっぜん簡単じゃないわねっ」
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