第29話 地竜のカツカレー
あの日以来ルーシーが勝負を挑んでくることは無くなった。
マヤの事を気にしているのだろう。
3人仲良く親子のように暮らしているさやか達の家庭を壊したくないのだ。
だがそれはルーシーがさやか達から離れるという結果に繋がっていた。
「最近ルーシーに会えないな…」
マヤと共に町に出てきているさやかはマヤの服を買いに着ていた。
今は丈を直すのに試着室に店員のエルフと入ってるので一人である。
さやかは何気に視線を上げた。
「あっあのポスターは!」
それは以前、町で行われるお祭りの運動会を知らせるポスターと良く似た広告だった。
「そっか、もうあれから半年経つのか…」
前回のお祭りに参加したいってケビンにお願いしようとしたら熊が襲ってきてその後は研究所に連れていかれたのを思い出す。
「お祭りか~」
あの時とは違いさやかもハーフエルフという証明付きのステータスプレートを持っているので気兼ねなく町に入る事ができる。
祭りに参加しようと思えば簡単に出来るのだ。
「ママーどう?」
「とっても可愛いわよマヤ」
マヤが丈を直した服を着てさやかの前でクルリと廻る。
さやかはマヤを見て決断する!
この子のためにも悩んだ顔ばかりは出来ないわよね!
さやかは祭りに参加することを決めた。
そして、運動会でルーシーと勝負して私が勝ったら…
その日の夜、ルーシーがケビンの家に夕飯を食べに来たので食後ルーシーを呼び出した。
「来てくれてありがとうルーシー」
「いいの、私もさやかに話があったから」
久しぶりの二人っきり、同姓だが愛し合う二人は久し振りに正面から相手を見詰める。
そして、さやかから口を開く。
「ルーシー、私達の最後の勝負に今度のお祭りでやるスポーツで勝負しましょう!」
さやかから勝負内容を決めるのは実はこれが初めてであった。
それを聞いたルーシーは驚いた表情を浮かべたがすぐに真剣な顔付きになり…
「驚いたわ、まさか同じことを考えているなんて…いいよ、お祭りで勝負よ!私に勝ったらケビンとの結婚を認めてあげるわ!」
さやかはその言葉に驚くしかなかった。
ルーシーが自ら負けた時の話をしたのだ。
しかし、約束は勝った人の言うことに従うである。
「分かった。それまで私は鍛え直して全力で戦わせてもらうわ」
「こっちこそ、絶対に勝たせてもらうわよ!」
こうして、二人の決戦の日は決まった。
次の日からマヤと共に体を鍛えて鍛えてトレーニングに次ぐトレーニングに明け暮れるさやか。
一方ルーシーもさやかに負けないようにトレーニングを続けた。
そして、決戦前夜。
「二人共、俺からは何も言うことはない。明日は全力で頑張って貰うために腕によりをかけて作ったから食べてくれ」
ケビン手作りのカツカレーであった。
ライスの代わりに小さく千切って丸めて焼かれたパンが本物のご飯のようなモチモチ食感で更にカツは地竜というワニみたいなドラゴンの一種のお肉ってことで舌がとろけそうな美味しさだった。
「ケビン美味しい!」
マヤも大喜びであった。
ルーシーとさやか二人して…
『ケビンが一番女子力高いんじゃないかしら…』
っと相変わらず気の合う二人であった。
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